複雑・ファジー小説

Re: 神喰い【オリキャラ募集中】 ( No.29 )
日時: 2012/08/16 10:15
名前: saku ◆vSik97dumw (ID: AdHCgzqg)

第二話(パート9)

迷い揺れ、そして…黒風は答えた。






「……なるよ、俺に…大切なものを護れるだけの力を……神喰いの力をくれ!」







「……本当に、ええんやな…」
黒風の決意、それに対し、晴明は最後の確認をする。
「昨日言ったことは本当や、アンタの力は治せる、今ならな、でも、神喰いになったら……」
晴明は思い詰めたように、黒風に語り、確認をする。
が。
「かまわねぇよ……もう、何年も前に決めてんだ、人じゃなくても、獣じゃなくても、あっちゃいけない異能の存在でも……俺は」
思いを吐き出し、そして一息吸い、黒風ははっきりと言った。


「俺は…人として人を護りたい」


「……そか、なら……もう何も言わへん、神喰いにしたる」
黒風の決意を受け止め、晴明は笑顔でそう言った。


「時間があらへんから手短に説明するわ、これからアンタをアンタの神に会わせる」
「俺の神?」
「せや、せやけどその神はアンタの事を喰おうとするやろな」
「なっ!?喰われんのか!?」
「いや、喰われたらあかん、喰われたら負けやと思え」
「じ、じゃあどうすんだよ?」
黒風のその問いに対して晴明の答えは単純なものだった。
「喰え」
「……はっ?」
「喰われる前に喰え、神をな」
「はぁ!?そんなん出来るのか!?」
「知らんわ、出来るかどうかはアンタ次第や」
「なっ!?……なんつう適当な……」
「それしか無いんやからしゃーないやろ、一つだけ言うとしたらな、絶対に喰われるな、怪我はいくらでもして平気や、せやけど喰われたらあかん、喰われたら終わりや」
「なんか……アドバイスになってねぇ気がするぞ?」
「やかましいわ、時間が無いんや、もう送るで」
「お、おう!」
黒風が返事をしたのち、晴明は懐から一枚の紙を取り出した。
「なんだそれ?」
「だまって見とけや、いくで……」
そう言って晴明はその紙を黒風の額に付けた。
「お、おい何を…」
「んじゃ、頑張ってな」
彼が最後に聴いた言葉はそれだった。
そして。
黒風は意識を失った。








「さてと…またせてすまんなぁ」
晴明は何時ものような笑顔で目の前の男にそう言った。
「いえ、構いませんよ」
「しかし本当に久しぶりやねぇ何年ぶりやろ?」
「私が家を出たのが確か980年ごろでしたから……1030年程度ですね」
千年、それはつまりこの少年がそれだけの年月を生きているという事である。
人間の生きられる年月では無い、やはり、人間では無いのだ。
そして、晴明もまた人間では無いのだ。
「そうかぁ……もう千年にもなるんか……」
晴明は懐かしむような目で少年をみて、言った。


「なぁ……戻る気は無いんか?光栄くん(みつよし)」