複雑・ファジー小説
- Re: 神喰い【オリキャラ募集中】 ( No.30 )
- 日時: 2012/08/16 15:12
- 名前: saku ◆vSik97dumw (ID: AdHCgzqg)
第二話(パート10)
ある男達の話をしよう。
はじまりとなったその男は天才と呼ばれていた。
なんの天才か、それは【陰陽】である。
その男の生きた世、それは平安の世である。
闇が闇として残り、人ならざるものが多くいた世である。
その男、名を賀茂忠行という。
その男には二人の弟子がいた。
一人目、名を安倍晴明という。
類稀なる陰陽の才能を持っていた。
二人目、名を賀茂光栄という。
忠行の子、故に由緒正き血筋を持っていた。
この二人、共に陰陽の術を学んだ兄弟弟子である。
その力は凄まじく、晴明が手を降れば嵐を作り、光栄が歩けば地を割るとまで言われていた。
しかし、光栄はそれだけでは満足できなかった。
人の評価など所詮人が決めたもの。
彼は、神に認められたかったのである。
その想いは収まらず、ますます大きく、強くなっていった。
そして、ある闇夜のこと。
その夜は月さえも見えないほどに暗く、賀茂家のものは皆寝ていた。
ただ一人、光栄だけを除いて。
彼はその日家を出ようとしていた。
だが。
その時に止めたのが晴明だったのである。
何故なら彼が求めた力、それは賀茂家にとって禁忌の力だったのである。
地を司る神を喰らい、力を得る。
本来陰陽師、いや、神喰いは己の中の神を使う。
何故ならそれが自然の力だからだ。
しかし彼の考えは違った。
彼の考えは、他者の神を喰らい奪うことだったのである。
だからこそ、晴明は止めた。
分かり合うため、己の全てを使い止めようとした。
二人は戦い、争い、その戦いは都の空を焦がし地を砕き、丸一日争い続けたという。
勝ったのは光栄だった。
彼は既に禁忌の力を身につけていたのである。
そして、晴明は止められなかったことを悔い、自らに呪いをかけた。
すなわち、延命の呪い。
己の他の全てが消えても己だけは生き残る。
ただ、光栄を止める為に、彼は今生きている。
それが約千年前。
そして今、あれ程止めたいと願った、あれ程連れ戻したいと願った弟弟子が目の前にいる。
彼は、この瞬間を、千年待ったのである。