複雑・ファジー小説

Re: 神喰い【オリキャラ募集中】 ( No.69 )
日時: 2012/08/25 00:01
名前: saku ◆vSik97dumw (ID: CvekxzGv)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode


第二話(パート14)

少女の握る刃は真っ直ぐに振り下ろされ。
ザンッ!と鋭い音がして。
黒風の足を切り裂いた。
「がっ!?あぁぁぁあ!?」
赤い鮮血。
黒風はバランスを失い倒れる。
傷は深く、立てるレベルでは無いようだ。
「くくくっ!無様じゃのう、主様よ」
嘲笑うように少女は言う。
「結局、これが現実じゃよ、人は神には勝てん」
「……ざけんな……まだ……勝負は付いてねぇだろ……」
おそらく激痛のせいだろう、黒風の声から力が失われている。
「終わりじゃよ、儂がもう一度刃を振り下ろせば決まる、もはや主様は逃げられん、その傷ではな、ほとんど両断に近いからのう」
少女は余裕を見せ付け残酷に現実を叩きつけた。
しかし。
「……逃げらんなくてもいんだよ……」
「……何?」
「どんな傷受けてもよ……どんな無茶な条件でもよ……勝たなきゃいけねぇんだよ……」
黒風はまだ、諦めていない。
「……ふん、戯言を」
少し苛立ち、少女は言う。
「よかろう!ならばその息の根、今すぐ止めてやろう、まだ負けてないなどと二度とぬかせぬようにな!」
しかし、黒風は答えない。
ただ不敵に笑うのみ。
それを見た少女は。
「その薄ら笑いを……やめんかぁぁぁぁあ!」
怒気を込めて刃を振り下ろした。
しかし。
刃は黒風に届かない。
黒風が刃を掴み、握ったからである。
「なっ!?」
「……ほらな?まだ負けてねぇ」
刃を素手で掴んでいるのである、当然無傷な訳が無い。
黒風の手は真っ赤に染まり、鮮血が滴り落ちている。
「ぬ、主様よ!な、何を考えておるのじゃ!?」
その問いに黒風は静かに答える。
「……てめーを倒す方法」
「だからそんな事は無理じゃと……」
少女は言う。
しかし。
「だからなんだよ」
黒風はそんな事はどうでもいいとでも言う様に吐き捨てる。
「……勝てるとか、勝てないとかじゃねんだよ……勝つんだよ……」
「や、やめよ!主様では儂には勝てん!」
「知るか……ここで引いたら……ここで引いたらダメなんだよ……」
声は弱々しく、力も弱々しい、少女が少し力を込めれば切り裂ける程に。
ただ、その目だけは違った。
「……あっちでよぉ……待ってる物が、待ってる人がいるんだよ……俺を助けてくれた人が……いるんだよ」
黒風の手に力がこもる。
同時にブシュッと嫌な音がして、流れる血も増える。
「や、やめよ!これ以上力を込めれば主様の手が千切れてしまうぞ!?」
少女の叫び、しかし。
黒風は聞いてない。
「あいつを助けたいって一番思ってる俺が……あいつに助けられた俺が……こんなところで……」
さらに強く、強く刃を握る。
「もうやめよ!勝負はついておる!」
しかし、黒風はやめない。
何故なら、彼の思いは、彼の願いは、まだ叶っていない。
さらに強く力を込め、彼は叫んだ。


「こんなところで……負けて寝るわけにはいかねぇんだよ!!!!」


その瞬間。
黒風の握っていた刃が。
ガシャン!
と、音がして。
黒風の手によって砕けた。
「な!?や、刃が……」
その時。
「……らぁぁっ!」
「なっ!?」
黒風の拳が少女に当たる。
しかし。
「……くそが」
もはや、そこに力は無かった。
少女を倒すだけの、力は無かった。
「…………主様よ、名は?」
少女が黒風に問いかける。
「……黒風、黒風 春」
「そうか、ならば儂も名乗ろう」
そう言って少女は静かに息を吸い、言った。
「儂の名は…………」