複雑・ファジー小説

Re: 【短編集】日常とは何なのかと申しますと ( No.1 )
日時: 2012/08/10 15:23
名前: 稲荷 ◆6RQCIAKXwE (ID: SGJxjeZv)

『とある友人の家族事情』

「最近ね、弟がファミコンにハマってるのよ」

 グラスの中の氷をつつきながら、目の前の友人はふいに呟いた。
 午後3時のファミレスの中は、テーブルの参考書を開いている学生の姿が多く見られる。いかにも真面目そうな外見をしている隣のお兄さんは、先ほどからいっこうに顔を上げない。たしか、私たちが座った時点ですでに参考書とにらめっこをしていた。ご苦労なことだ。
 そういう私たちも、すでに店内に入ってから30分を経過している。だというのに、私と友人のお皿には最初に頼んだケーキがのっていた。一口食べては10分近く話し、時折ドリンクバーにおかわりを取りに行く。ファミレスは、私たちのような女子高校生には大変有り難い場所である。
 
「ファミコンって……、あの、一昔前のゲーム機でしょ?」
「そう。今はほとんど出回ってないのかな……?」
「……弟さん、かなりのゲーマー?」
「まさか。ゲームより外で体を動かすことの方が大好きな、小6のガキ大将よ」
「ふうん。一体どういう経緯でファミコンに?」
「それがさ……」
 
 彼女はグラスをぐいっとあおぎ、中に入っていた氷を豪快に噛んだ。口からこぼれた破片がテーブルに飛ぶ。私はさりげなくそれをナプキンで拭き取ると、改めて友人の顔を見た。

「うちの家族、あんまりゲームはしないんだ。そんなに裕福じゃないし、やる必要性なんて感じてないし」
「今時珍しいね」
「でしょ? ただ、お父さんだけは例外。私たち家族も最近知ったんだけど、昔はかなりのゲーマーだったらしいの。それで、この間倉庫を片付けてたらファミコンが出てきてね?」

 彼女の話を要約すると、約十年ぶりに掘り出した昔の宝物にすっかり心を奪われたお父さんは、掃除もほっぽり出してテレビの前から動かなくなった。そして、馴染みのないゲーム機に興味を覚えた弟さんはその虜になり、それをお父さんがどう解釈したのか『息子が俺に興味を持った!』と勘違いして、現在ニュース以外は全てプレイ画面だという。

「おかげでお母さんが怒っちゃってさぁ。ちょっとギスギスしてる」
「大変ね……」

 なんと返して良いのか分からず、ただそれだけ呟いた。
 けれど、そんなことを話す友人の目は多少憂いているものの、どこか可笑しく笑っているように思えた。
 なんだかんだ言って、友人の家族仲は良好のようだ。人それぞれの幸せの形がそうであるように、家族の幸せの度数もまた、違ってくる。
 私は空になった自分のグラスと、ついでに彼女のグラスをドリンクバーまで持って行った。


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 文章力向上よりも、落ちの付け方の勉強しろと言いたくなるような文章でした。
 さて、この話の元ネタです。交差点を渡る際に、向かい側から来たお姉さん方の一人が「うちの弟、ファミコンにハマってさぁ」と話していたところからです。それを聞いた瞬間、ちょっと面白いかもと言うことで書いてみました。
 できることなら、もう少しギャグ風味にしたかったというのが本音です。
 もしかしたら修正もするかもしれませんが、読んでいただきありがとうございます。