複雑・ファジー小説
- Re: 【短編集】日常とは何なのかと申しますと ( No.4 )
- 日時: 2012/08/10 15:22
- 名前: 稲荷 ◆6RQCIAKXwE (ID: SGJxjeZv)
『家庭内上下関係』
「お母さん。うちはなんでこんなに貧乏なの」
夕食の途中、ふいに弟がそんなことを呟いた。父は箸を止め、私は弟をじろりと睨み、そして母はなんてことないように返した。
「お父さんが頑張って働かないからよ」
この返しにはさすがの父も驚いたようだ。ぎょっとした顔で母を見る。当の本人は素知らぬ顔をしてご飯を咀嚼していた。
一方で、弟は「ふうん」とだけ言うと再びテレビに顔を向けた。画面の中で、1K家賃3万のボロアパートに住む売れないお笑い芸人が、下品なネタを披露している。思わず顔をしかめると、私は無言でチャンネルを変えた。すぐに弟からの抗議の声が上がる。
「なにすんだよ!」
「今は食事中よ? 考えなさいよ」
「そうよ。だいたい、ゴールデンタイムで放送する番組なんだから、編集するときにカットしちゃえばいいのにねぇ」
意外にも母からの同意を得られたので、私は弟に「ほら見なさい」 と視線を送った。弟は小さくして舌打ちを返す。
「最近そういう番組増えたよね。普通に下ネタ言うのを黙認するの」
「それが“面白い”とか“ウケる”って勘違いしてるのよ。可愛そうにねぇ」
「けど、それだったら母さん達の時代だって同じだろ? 普通に女の人の裸とかやってたじゃないか」
「あれは品のある下ネタなのよ」
「なんだよそれ」
支離滅裂な母の持論に、弟は味噌汁を勢いよく飲んだ。
「あ、か、母さん、さっきのは……」
「なぁに、お父さん」
「いや、その……」
可愛そうに。一番家庭内にお金を納めてくれている父は、家庭内において絶対的権力である母の前に弱く、今まで発言権を失っているのでありました。
いや、単純に言えば発言しようにも母達のターンばかりで話せなかっただけなのだが。
「父さんも、頑張ってるんだけど……」
「分かってるわよ。中間管理職なんて、働いている割にはあまりもらえないんだから」
「そうなんだよ……」
「だったら、もっと出世して高いお給料もらうだけの話でしょ」
再びお父さんの顔面が蒼白になり、お母さんは「頑張ってよ」と言いながらお父さんのお茶碗にご飯を追加した。
その様子を見ていた私と弟は、心の中でちょっぴりお父さんに同情した。そして、
「頑張れ、お父さん」
お母さんには無理だろうけど、と付け足した。
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絶対この家族はお父さんの位が低いです。
とあるラノベの主人公は「家族内で位の低い人が料理を作る」なんてことを言っていましたが、絶対にお父さんが作ってますね、これ。
その様子を子供達は、社会の縮図を見たように思っているのでしょう。
