複雑・ファジー小説

プロローグ—憤怒— ( No.1 )
日時: 2012/08/05 17:17
名前: 夏樹 りん ◆IP0D6MCWdg (ID: xIyfMsXL)
参照: (>ワ<)リメイク〜

——運命とは残酷だ

「私は、決めたの。お前を、倒すってねっ!」
少女は手に握り締めている刀を少年に向ける。少女の頬には一筋の涙が伝っており、一筋の血が流れている。身体はボロボロ。でも瞳には強い光を宿していた。

「へぇ、結末は見えているのに。人間って馬鹿だね〜」
少年は余裕だった。少女と比べれば天と地の差。身体はどこも傷ついてはいない。だが瞳は酷く濁っている。

「……結末が見えていようと関係ない。私のやりたいようにやるだけよ!」
そう叫ぶと少女は少年に斬りかかろうと走った。ただ必死に。でも少年は逃げもせず、武器かなにかで攻撃しようともせず立っていた。けれども、眼はかすかに紅く光った。
少女が刀を振り上げた。そして、斬りつけた。
少年はそれを片手で受け止める。だというのに、血すら流れていない。

「だからさぁ〜、なんで無駄なことをするわけ?」
「無駄? そう思うなら……」

少女の刀が輝かしい光に包まれた。少年は驚きを隠せなかった。

「これを見てから言いなさいよッ!」
光に包まれた刀を握る手に力が入る。少年は片手で受け止めていたが、受け止めきれなくなった。
受け止めていた手が、少年の胸が赤に染まった。

「……人間ごときが、僕を僕の血で穢すなんてね」
少年は狂ったように言った。酷く濁っていた瞳は狂った人の眼をしていた。
正気ではないと、今の少年は正気ではないと少女は感じた。
今までに増して、強くなっているだろう。もしかしたら勝てそうに無いのかもしれない。けど、諦めないと誓った。
必ずあの少年を倒すと……救うと決めたのだから。