複雑・ファジー小説
- 第一章 ( No.10 )
- 日時: 2012/09/08 11:21
- 名前: 夏樹 りん ◆IP0D6MCWdg (ID: xIyfMsXL)
- 参照: (>ワ<)リメイク〜
ノワール・エンシェントは夏歌と実習のときのペアの子だ。夏歌本人は認めたくは無いが、かなりのイケメン。成績優秀。ただでさえモテるであろう彼。が、彼がモテる理由はこれ以外にもある。まずは「エンシェント家」の嫡男だからであること。エンシェント家は政略結婚とかは、よほどの事が無い限りしないらしい。いい身分になりたい汚い女は近寄るだろう。それと、母性本能をくすぐる「ナニか」があるらしい。これは夏歌の親友、春光からの情報だが。
此処、図書室である。声は廊下から聞こえてくるのだが夏歌にとって迷惑以外の何者でもなかった。
「……うるさいわぁ。エンシェント家って他人の迷惑を考えへん奴らばかりなん?」
先ほどとは違うイントネーションで夏歌は言う。声が低くなっているし、発音を違う。つまり、怒っているのだ。
そんな夏歌に気付いた真奈は夏歌に言う。
「ねぇ、夏歌。先輩達に会いに行こう」
「ええ、そうやね。ロン先輩やカイちゃん先輩、ミレイ先輩やライーシャ先輩のもとへ!!」
「我がオアシスの先輩達のもとへさぁ、行こう!」
と、テンションがあがったのが、彼のせいであがったテンションは急降下している。
「あの〜、ナツネ先輩居ますか〜?」
図書室の扉が静かに開いた。
ノワールの声だ。彼は夏歌の事を何故か、「ナツネ先輩」と呼ぶ。
(ナツネって誰よ。私は夏歌よ。)
夏歌は真奈に「ごめん」と小さく謝るとノワールの近くへ行った。取り巻き達の視線は剣の刃のように鋭い。
「ノワール、私はナツネではない、夏歌よ」
「別にいいじゃないですか、一文字違いだし」
子供っぽく無邪気に笑ったノワール。その笑顔に取り巻き達は声をあげる。
(五月蝿いわぁ、もう)
「あのね、他人の名前を間違えるなんて失礼よ。貴方、嫡男でしょう? それくらい解ってるはずよね」
「わざと間違えているんですよ。”夏歌”先輩”だけ”にね……」
夏歌とだけを異様に強調して言う。その強調した言葉に取り巻き達は反応して、視線が鋭くなった。
「……腹立つ餓鬼ね」
皮肉をたっぷり込めて言った夏歌。なのにノワールは気にもせずに笑った。今度は妖艶な笑みだ。
「貴女はこの腹立つ餓鬼と同じ血が流れているのならば、どう思いますか?」
この言葉に夏歌は驚いた。そして、ふざけるなと思った。取り巻き達は目を見開いていたりしていて、いかにも驚いている。
きっとふざけているに違いないのだろうと夏歌は思う。しかし、ノワールの目は本気だ。
「ふざけるのはやめてもらえる?」
「ふざけてなんて居ませんよ。だって貴女は僕と……」
「夏歌!!」
真面目な顔で言ったノワールの言葉をさえぎったのは真奈だった。何故だろう、真奈は焦っている。真奈が焦る必要なんて無いというのに。
「はっ早く、先輩達の所に行こう! ね!」
と、強引に私の腕を引っ張っていった。真奈がこんなにも焦るなんて意外だと夏歌は思う。きっと自分を助けるために行動してくれたんだろうとそう思うようにした。図書室を出て、三年の教室へ早足で行った。
図書室では一人、少女が居た。
読みかけの本を閉じ、密かに笑う。
「……コレが、12回目の世界、か」