複雑・ファジー小説
- Re: 幸せの魔法 ( No.20 )
- 日時: 2012/08/13 18:17
- 名前: 夏樹 りん ◆IP0D6MCWdg (ID: xIyfMsXL)
- 参照: 虚ろな瞳の子はいつでるのかな〜
「え? 僕が居る理由かい? それはね……」
と、言いノワールを指差した。
「ノワール・エンシェント、君を殺しに来たんだよ!」
笑いながらサタンは言う。エンシェント家の嫡男であるノワールを殺す? 何故?
「君はエンシェント家の中でも上の方の分家の子だろう? だが、本家にあってはならない事が起き、本家の養子となった……」
「やめろッ!!」
ノワールは突如、そう叫んび、耳を塞いだ。そして「ちがう、ちがう」と首を横に振っている。現実がら目を逸らしているんだろう。
「そして、君は資格も無いのにエンシェント家を継ぐことになった……」
「うるさい! 俺は、俺は」
ノワールの目にうっすら涙が浮かんでいる。きっと、辛かったんだろうな……
「君って可哀想だよね〜」
サタンは少し間を取ってっから、ノワールを、そして私を見下した目で見てから言った。
「エンシェントを継ぐはずだった長女、そして、次に継承権があった次女の代わりだもんね!」
と、腹を抱えて笑い出した。
自分のことじゃないのにとても腹が立った。でも、攻撃なんて出来やしない。だって力の差は歴然。どうあがこうが勝てない。
「女の代わりの男って、ダサいよね!」
「うるさい……」
「でもさぁ〜ノワールクン、君にイイお知らせがあるんだよ〜」
子供のように言うサタン。何故だか余計に殺意が沸いてきた。
「エンシェント家を継ぐはずだった長女、ナツネ・エンシェントがね、帰って来たんだ。だから、君は……」
「もう要らないんだよ」
やけに響いたこの一言。たしか言霊的な何かだ。授業で習った覚えがある。ふと、先輩を見ると目を大きく見開いていた。かすかに震えていた。何故? ノワールを見ると彼もまた大きく目を見開いていた。絶望しているような目をしていた。
「要らない子は、殺してもいいよね」
やめろ!
って言ったはずなのに声が出ていない。斬りかかろうと身体を動かそうとしても足が鉛のように重くて動けなかった。嘘でしょ……
「夏歌、君はね操られているんだよ! 本当の”夏歌”にね……」
本当の私に操られている? どういう意味よ。サタンをにらみつけるとサタンは笑った。
「何も知らないって、哀れだねぇ!」
狂ったように笑ったサタンは怖くて怖くてしょうがなかった。
「……ネタバレが早いんじゃない? 憤怒のサタン」
聞き覚えのある声がした。ひどく懐かしくて、悲しくなる声。声の主は一体誰?
すると、私の前に蒼く光魔方陣が現れた。その光は一瞬にして強く輝き、一瞬にして消えた。消えた後、魔方陣の上に立っていたのは。
「久しぶりだね」
とても綺麗な茶色い髪、
「ええ、精神の世界<アキリの世界>以来ね」
凛々しい後ろ姿、
「……誰?」
私の方を向いたときに見えた深い、綺麗な蒼い目で、
「私はね、夏音よ」
私にそっくりな少女だった。