複雑・ファジー小説

プロローグ—傲慢— ( No.3 )
日時: 2012/08/05 17:44
名前: 夏樹 りん ◆IP0D6MCWdg (ID: xIyfMsXL)
参照: (>ワ<)リメイク〜

——過去は皮肉ね

「なんでだろうね。無駄だってわかっていても無駄じゃないって思うんだ」
地面に倒れこんでいる少女は言う。血まみれで立つことさえも出来ないくらいボロボロだ。左腕は二本の剣に貫かれている。そこから血が涙のように流れる。

「ふふ……私も昔はそう思っていたわ」
上品に女性は笑った。過去の記憶を思い出しながら。女性も血まみれであるが、かろうじて立っている。

「あたしね、生まれ変わったらみんなで笑いあえる世界に生まれたいんだ。勿論、貴女達も含めてだよ?」
少女は笑う。でも、力なく。瞳には光は無く、ただ虚ろな瞳で笑った。
先ほどまでお互い殺しあった仲だというのに、少女は理想を述べた。

「……私もそう思うわ。こんな殺し合い、無意味だと思ったから」
皆、分かり合えればいいのにと女性は思う。でも自分が言えたことではない。自分も分かり合おうとせず、少女達を傷つけ、殺しかけたのだから。

「そうだよね、無意味だよね。ルシファーは気付いてたんだね。じゃあ、なんでサタン君は気付かなかったのかな? ベルゼブブや、ベルフェゴール、マモン、レヴィアタン、アスモデウス達だって」
「それは……解らないわ。私だって、貴女達と戦って気付いたんだもの」
女性、ルシファーは申し訳無さそうに言った。それに対して少女は笑った。
「別にいいんだよ? 気付いてくれたんだから。お姉ちゃんだってそう思うよ」

「……有難う」
ルシファーは一言言うと倒れながら散った。
ルシファーの亡骸の代わりに残ったのは、一輪の蒼い薔薇の花だった。

少女はその薔薇を見て微笑んだ。
「奇跡、起こるといいなぁ」


蒼い薔薇の花弁が一枚、空に舞った。