複雑・ファジー小説

第一章—歪みの前奏曲— ( No.8 )
日時: 2012/09/02 14:46
名前: 夏樹 りん ◆IP0D6MCWdg (ID: xIyfMsXL)

「魔法とは、精霊が産み出す魔法の源、すなわち<魔素>を己のもとへ集わせ、指令を出すことにより発動する」

正直言うとかなり面倒な作業だ、と青い目の少女——夏歌は思う。
少女は魔法を専門的に学ぶ学園の生徒だが、魔法を使うのは面倒だと言う。

此処は魔法学園の図書室。魔法書がきっちり丁寧に本棚に並べられている。今は休み時間なので人が数人適度居る。図書室は木造であり、木の匂いが心地いい。


「そういえば今日って、実習があったな……」
(うわー、最悪だー)
実習がある事に酷く落ち込む夏歌。実習とは今までに習った魔法を使いこなせるのかどうかを試すものであり、今までの授業をサボっていると悲惨な事になる。
(後輩に、彼が居なければいいんだけどなぁ)
実習はペアで行い、自分とは違う学年の人と組む。夏歌はこの学園では二年生である。三年か一年と組むのだが、三年は殆ど実習を行わないので一年と組む事になっている。
夏歌はペアの後輩の事が大嫌いなので実習の時間は憂鬱だ。

「夏歌」
柔らかなソプラノヴォイスが聞こえた方に振り向くと其処には、肩より少し長めのこげ茶色の髪に桜色の目をした夏歌の親友——真奈が立っていた。



「えっ、今回の実習先輩も一緒なの!?」
「うん! 久々に先輩に会えるわ!」
真奈は今日の実習について、夏歌に知らせに来た。その内容は「三年も実習に参加」という事だった。
三年と一緒なので少しは楽だ、と二人は喜んだ。それに、先輩に会えることを。

そんな中、黄色い悲鳴が聞こえてきた。夏歌はこの黄色い悲鳴の中心に誰が居るのかが分かった。
「キャアアアアア!! ノワールくぅうううん!」
かの有名貴族、「エンシェント家」の嫡男である「ノワール・エンシェント」であると。