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一章　第三遍　第四幕




「へぇー。美味しそうですね。でも、サクラさん料理はしないんじゃ……？」
「気が変わったそうですよ」

　クスクスと、軽く笑いながらキキョウが答えた。笑ったその顔は、さながら大自然の景色のよう。誰もが思わず見とれてしまうその笑顔と、柔らかな声。それらは、秋に自然を彩る紅葉のように艶やかだ。

「うーん……。折角なんですけど……今日はこれを使いたかったので」

　残念そうにそう言いながら、咲月がバッグの中から取り出したのは、あの割引券。サクラからもらったその券は、淡いピンク色の光沢を放っている。
　それを見た瞬間、キキョウの顔が一変した。
　大自然のように豊かだった表情が、椛が散るように消える。それはまるで、自然が作り上げた奇跡が、人工で作り上げた必然に変わるように。——『紅葉の麗人』。
　無表情になったキキョウは、声も変わっていた。

「それでは咲月様。地下2階へとご案内いたします」

　感情のかけらも感じられない、無機質な声がゆっくりと告げた。