複雑・ファジー小説
- Re: 君を探し、夢に囚われる ア・ラ・カルト解禁!お待せしました ( No.28 )
- 日時: 2012/11/07 20:10
- 名前: 黒雪 (ID: uDwIp9sO)
一章 第四遍 第一幕
地下1階から『地下2階』へと続く、薄暗い階段を下る音が辺りに響く。はっきり言おう、この階段は不気味だ。
1階から地下1階へと続く階段には、真っ白な壁に金色で模様が書いてあり、壁の上のほうには、洒落たピンクの笠をつけた、オレンジ色に光るランプが幾つも辺りを照らしている。また、階段そのものも綺麗で塵どころか、土足で通っているのに汚れひとつ見つからない。
しかし、この階段の壁は、所々ひび割れていて黒ずんでいる。明かりも、白く、今にも消えそうなくらい弱い光を放つ蛍光灯が、疎らな影を階段に作る。階段の角の方には、細かい埃が積もって絨毯のようになっていた。
薄らと寒気を感じさせるこの階段を降りるたびに、咲月の肌にはいつも鳥肌が立つ。そして、何よりも怖いのは階段の長さ。
踊り場を2回通り過ぎる——着かない。5回、6回通り過ぎた。着く気配がない。10日目——まだ着かない。
1階から地下1階へ下りる階段は、踊り場を1回通り過ぎるだけで良い。しかし、この、地下1階から地下2階へと下りる階段は幾ら踊り場を通り過ぎても、着かない。
15回踊り場を通り過ぎて、16回目の踊り場でようやく、地下2階のフロアが姿を現した。
「この……。階段……。長い……!」
息を切らせながら、咲月がフロアにしゃがみ込む。
普段は家の中でごろごろして過ごすか、大学で座って講義を聴くか、はたまた家で小説を書いているしかしない——要は運動不足の咲月にとって、この階段は地獄とも言えるのだ。
その一方。咲月を案内してきたキキョウは息を切らすどころか、しゃがみ込んだ咲月を見て軽く笑っている。しかし、その表情はどこか冷淡で、サロンに居た時のような笑顔とはまた、異なっていた。
「咲月様。エレベーターの方がよろしかったでしょうか? 最近導入されたので、すっかり存在を忘れていたのですが……」
「先に言ってくださいよ。帰りからはエレベーターで帰りますからね。……今まであんなに苦労して上っていたのに。……今日からはとても楽になるわ……!」
尚も、床に座ったままの咲月の体が突然、フワッと浮いた。顔の真横に白衣を着た白い肩が見え、そのまま視線を顔まで上げると——。
「あ、アオイさん!」