複雑・ファジー小説

Re: 君を探し、夢に囚われる 第四遍 第三幕解禁 ( No.32 )
日時: 2012/12/13 18:59
名前: 黒雪 (ID: 10Uu3dBQ)

一章 第四遍 第四幕




 部屋から出たアオイは、『地下16階』のシフトをスイゼンと交代し、サロンへと向かった。
 外は夜。ディナーやカクテルなどの酒類も提供している『Dream Prison』にとって、夜の営業にアオイは欠かせない。
 従業員の中でアオイほど酒に通じているものは居らず、特にカクテル・リキュールにおける知識で彼に敵う者はいない。最近ではワインソムリエの資格を取得し、ますます客からの需要も増えているのだ。
 服装も、『地下16階』では白衣を着ていたがその下はスーツ。淡いピンク色のワイシャツに、少しクリーム色がかかった高級そうなズボンと上着を合わせている。その格好はまるで、何処かのクラブのホストのような印象を与え、近づくだけで女性が火傷するとは嘘か真か。
 しかし、そうした火遊びを目的としてアオイを指名する客は、あることを境にサロンに二度と姿を現さなくなる。

「アオイさーん! ア・ラ・カルトの『Take Out』お願いできますぅ?」
「やれやれ、ですね。まだ諦めていらっしゃらないのですか。そんなに言うなら御伴致しますよ、泉美様。仕方ありません」

 アオイが軽くため息をついて、客からのオーダーを受ける。受けたオーダーはア・ラ・カルトの『Take Out』。これこそが、女性客の一部の姿が消える原因である。稀に、その後も姿を見せる客もいるがそれも長続きしない。
 サロンとしては、客が減ってしまうのであまり喜ばしいことだと考えてはいないが、頼む客が後を絶たないのだから仕方がない。

「またオーダー入ったの?」
「サクラ、申し訳ございませんねぇ。行って参ります」
「ちっとも、申し訳なさそうに聞こえない気がするのは私だけ……って話の途中なんだけど」

 これっぽっちも申し訳ないなんて思っていないアオイは、サクラの話を最後まで聞かず、ひらひらと手を振って、色とりどりの光があふれる夜の町へと消えていった。