複雑・ファジー小説
- Re: 君を探し、夢に囚われる 更新お待たせしました! ( No.58 )
- 日時: 2013/03/05 20:45
- 名前: 黒雪 ◆SNOW.jyxyk (ID: l9lUJySW)
二章 第二遍 第五幕
「あの、擬似地雷って……」
「その言葉どおりでございますよ。本物の地雷と同じように、地中浅くに埋められ、誰かに踏まれるのを待っているのです。踏んだ暁には、屈強な警備員達が参りますので、彼らに迷惑をかけないように、ということです」
「踏んだらどうなるんですか?」
面白そうだという表情を浮かべ、瞳をキラキラを輝かせて質問する咲月は、まるで中学生だった。
「ご自分で試されては? 私は一切、フォローも手助けも致すつもりはございませんので、全て自己責任でお願いいたしますが。ちなみに、1つ踏むことに200万円の罰金が伴いますので」
「……やっぱりやめて置きます。っていうか、何でそんなものを開発しているんですか。あまり必要性が感じられないというか」
「研究者達の遊びゴコロ、というやつですよ。いくら、世界から地雷が少なくなったとはいえ、いささか不謹慎に思えるのですがねぇ」
スイゼンはこの研究所に何度か来たとこがあるらしく、迷うことなく歩を進めて行く。咲月は、細心の注意を足元に払いながら、その後を不安げな足取りで付いて行った。
「すごーい! 研究所って、なんかこう……もっと殺風景というかなんていうか……。何も無いところだと思っていました」
『遊びゴコロ』が満載の駐車場を抜けた先は、緑があふれる中庭となっていた。この中庭を囲むようにして、全6棟からなる研究施設が立ち並んでいる。
研究施設は咲月がある程度予想していた通り、幾何学的な建物だったが、至る所に建てられている、よくわからないオブジェはあまりにも建物と不釣合いすぎた。
白く、余計なものを一切取り払ったようなデザインの、シンプルな建物とは正反対に、赤やピンク、さらには虹色の水玉模様に塗られた、さまざまな色。さらに、至る所に凹凸や突起が付いているオブジェは、派手で人目を引く。
何故、こんなにも均衡を崩そうとするのか。
オブジェが無ければ、ここはとても素晴らしい景色だっただろう。
爽やかに木々の間を駆け抜ける、一陣の風。柔らかな光に照らされる、緑の葉。そして、白く輝く、清潔感あふれる研究棟。
「研究者達も、ふと、外を見たときに笑ってしまうような息抜きが必要なのですよ。早川咲月さん」
声に驚き、後ろを振り向くとそこには、1人の白衣をまとった女性が居た。
「初めまして。楢崎翼(ならさきつばさ)と申します」