複雑・ファジー小説

Re: 君を探し、夢に囚われる 【参照1500感謝です!】 ( No.67 )
日時: 2013/06/13 18:26
名前: 黒雪(=華牒Q黒来) ◆SNOW.jyxyk (ID: 6sQlqYA7)

二章 第四遍 第一幕





 光輝く五芒星の中心に描かれた、Dの文字。これこそが、好星企業のシンボルマークだった。
 記憶のどこかで、何かがフラッシュバックする。強い光、鋭く硬い物が奏でる、摩擦音。けたたましく鳴り響くサイレン。そして、頭を殴られたような強い衝撃。
 真っ白な空間が目の前に広がったように見えたが、それも刹那に消えた。
——ここはどこ?
 私の体を、柔らかい物が包み込んでいる。温かくて、ふわふわしていて、でもどこか硬い感触がした。
 誰かが私の名前を呼んでいる気がする。でも、無理だよ。ごめんね、私はここから出るわけにはいかないの。
 まだ、ここでやることが残ってるから。
 うっすらと開けた目から誰かの顔が見えた。どこかで見たことがあるような、でも自分の記憶の中とは違う顔。何かを叫んだように思えたけれど、音となって届くことはなかった。
 目の奥が再び白く光り、意識がしだいにはっきりとしてきた。
 暗闇。
 目を開ければ、闇しかなくて。何も見えなくて。チカチカと瞬く『D』の残像が、視界を奪う。
 物音が耳に届き、焦って手を伸ばした時に触れた、何か、に縋るようにして立ちあがった。

「きゃッ」

 白い閃光が周囲を切り裂いて、私の顔を照らす。暗闇に慣れかけていた視界が、またしても失われた。それでも、光があるからか、徐々に景色が浮かび上がり、辺りの様子が飛び込んできた。
 そして、私が触れた、何か、は白衣の裾だった。

「また勝手に、外に出たのですね。沙羅様」
『違う』
「なんで。私はいつまでここにいなくちゃいけないの? どうして、この建物の中から出たらいけないの? 楢崎、答えなさいよ」
「あなたのお父上、好星企業の社長からの命令だと、何度言ったらわかるのですか」
「いつもそればっかり、命令なんて聞き飽きた。理由は? その命令を出した」
「申し上げられないと、何度言えばよろしいのでしょうか?」
「私の納得する答えがくるまで、永遠に」
『私は——』

 私はいつものやり取りを済ませ、与えられている自室、いや、独房へと向かおうとした。

「今日はお客様が見えています。早川咲月という方です。30分後に連れてきますので、そのおつもりで」
「はいはい、わかったわよ。いい子にして大人しくすればいいんでしょ」
『——沙羅じゃない』