複雑・ファジー小説
- Re: 君を探し、夢に囚われる ( No.9 )
- 日時: 2013/09/04 12:32
- 名前: 黒雪 (ID: oQpk3jY4)
何故だろうか? 原因はもちろん『Traum Morgen』。実際に使った受刑者は、口々にその恐ろしさを、テレビのインタビューに対して告白した。
自分が犯した罪はこんなにも恐ろしいものだったのか。もう二度と自分が殺される夢なんて見たくない。
もうやめてくれ! 俺はこんなに反省してるのにまだ追いかけてくるのかよ。くるなよ来るなァ!
出会った人全てがナイフを隠し持っているように見えて、外を歩くのが怖い。
そんな受刑者たちの声は日を追うごとに多くなり、ついに『Traum Morgen』を実体験してみようという国民は減少の一途をたどった。
全く犯罪防止策が役に立たなかった今までの時代と比べると、とても大きな変化だった。増加する一方だった犯罪件数を減らし、再度逮捕される人も少なくなった。新たに犯罪に手を染める人も殆どいなくなり、日本からは順調に犯罪が消えつつある。
その一方、警察官による暴動が目立つようになった。
犯罪が激減したことによる大量のリストラで、職を失った警察官が多く存在するようになったからだ。
しかし、それもほんの僅かな間のこと。すぐに彼らは新たな職を手に入れた。好星企業が彼らを事務職として雇ったからだ。
『Traum Morgen』の管理をするにあたって、どうしても経理や管理職といった人材を必要とする。新興企業だった好星企業にとって、『Traum Morgen』のような大事業は人員不足だったのだ。
好星企業はこうして、大企業へと進化を遂げていったが忘れてはならない。企業が抱える『四天王』の存在を。
彼ら——四天王は、日本でも有数の名家、その名家の中でも特に有名な天楼、神楽、胡蝶、幻紗、の当主の事を指す。彼らはそれほどの名家の当主なので、働く必要は一切無い。
では、なぜ彼らは好星企業に勤めているのか。
そこには憲法が絡んでくる。憲法が改正され、残虐刑を『私企業なら』執行できることになった。
しかし、全て私企業に任せるのは国家として不安だし、かといって国有化してしまえば違憲となる。そこで彼らだ。
彼らは好星企業の幹部、トップ4として社長の次に権力を持つ。彼らが行うのは、囚人に対する刑の執行だ。つまり、好星企業が行うほぼ全ての業務を彼らが取り仕切るわけで、おそらく、実際の立場は社長より上だろう。
政府から企業の監視を委託された彼らは、建前としては社長補佐。しかし、本性は国が放った監視者だ。
それが彼らの裏の顔。
さて、表の顔はといいますと——。