複雑・ファジー小説

#9 ( No.11 )
日時: 2012/08/12 20:50
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)



「……」
 俺はてっきり、メリーとまだ見ぬレジェンズが戦っているのかと思った。
 少なくとも、リビングで茶を飲みながら楽しそうに会話しているなんて微塵にも思っていなかった。
 方やメリー。
 方や名も知らない少女。
 見たところメリーより小柄。
 栗色の髪の天辺に二つある尖った耳。
 まるで神社の巫女さんのような服装の腰の下辺りから垂れる尻尾。
「あ、優輝さん! こっちにどうぞ、お茶入れますね!」
 俺に気付いたメリーが席を勧めてくる。
「……」
 もう片方の少女もペコリとお辞儀をしてくる。
 つられるように俺も頭を下げた後、
「ちょっと待て、この子は誰だ!?」
 問い質す。
 見た目からして人間ではない。
 この子がレジェンズであることは間違いないだろう。
「この子ですか? この子は私の友人の…」
 そこで一旦止め、少女に続きを促す。
「……尾々 栗狐(おび くりこ)」
 少女、栗狐は視線を逸らしてぼそぼそと呟く。
「栗狐は人見知りが激しいんですよ」
 成る程、だから声が小さい…のか?
 ん? 栗狐、栗狐、くりこ、くりこくりこ…こくり…?
「コックリさん?」
「……」
 栗狐が小さく頷く。

 コックリさんといえば降霊術を用いた占いの一種だ。
 複数人が人差し指を10円玉に乗せ、霊に呼びかけることで色々な質問に答えてくれるという。
 ちなみに俺はやったことが無い。
 諸事情で禁止されている学校も多いだろう。
 そのコックリさんが目の前に居るわけだが。
 コックリさんと言えば途中でやめると呪われるだの色々良くない話が出回っている。
「じゃぁ、俺の質問に答えてくれるか?」
「……」
 黙りながらも頷いてくれた。
 メリーの友達なら倒すことは必要ないだろうが呪いやらについて聞いておいたほうがいいだろう。
「栗狐は人の精神に介入することが得意なので色々な情報を素早く集めることが出来るんですよ」
 なるほど。
 それがコックリさんの仕組みか。
 質問をうけた栗狐がその場で素早く情報を集め、その質問に答えると。
「…質問は?」
「っと、ごめんごめん」
 情報収集に関しては今度考えてみることにしよう。
「じゃあまず、コックリさんを途中でやめると呪われるって聞くけど、何でだ?」
 彼女の意思で呪っているのか、もしくは別の力の作用か。
 恐らくは何か力が作用して…


「…………ムカつくから」