複雑・ファジー小説

#10 ( No.12 )
日時: 2012/08/17 23:19
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)


 えぇー…。
 予想していない答えが返ってきた。
「…ムカつくって、何で?」
「私だって都合がある…、なのに人間は私の都合を考えずに呼び出す……」
 降霊は栗狐の意思ではなく強制だということか。
「呼び出すだけならまだ良い…情報集めは楽しい……」
 やはり途中でやめることに問題があるわけだ。
「呼び出されたとき私は参加者に存在を依存させる……」
「へ? 存在を…?」
「例えば一人目に手、二人目に足、三人目に胴体っていう風に預けていく感じです」
 メリーが分かりやすい例を教えてくれた。
 ただ同時に、嫌な予感がする。
「存在を依存させている以上、一人でもやめれば…」
「……」
 これ以上聞いてはいけない気がする。
「文字通り、身を引き裂か…」
「ストップ! もう分かったから!」
 呪われても仕方ない気がする。
 呼び出しておいて傷つけるだけなんて怒りを買うも同然だ。
 栗狐の眼が怨念に満ちている。
 今まで何度そんなことが合ったのだろうか。
 ん? でも……
「参加した全員が呪われたって事例もあったような……」
 私利私欲なんて事はないだろう。
 こちらもまた何かの復讐とかそういう類のものだろうか。

「暇潰しと…信仰のため…」
「……」
 私利私欲だった。
「まぁ良いじゃないですか。ところで優輝さん…」
「ん?」
 メリーが口を開く。


「栗狐もここに住ませてもらっていいですか?」



「……今何て?」

「栗狐もここに住ませてもらっていいですか?」



「はあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
 凄いことを聞かれた気がする。

「まてまて! 栗狐「も」ってそもそもお前を住ませる許可すらしてな…ガハァッ!」
 何かデジャヴを感じる、二度目の腹への衝撃。
 たった二回で耐性がつくわけもなく、案の定意識は彼方へと消えていった。

 〜〜〜〜〜

 ふぅ…。
 おかしいですね、しっかりと「暗示」をかけた筈ですのに。
「栗狐、手伝ってもらえます?」
「うん……」
 栗狐と共に優輝さんの頭に手を当て、暗示をかける。
 メリーと栗狐との同棲を許可。
 栗狐の暗示の力は凄まじいものです。
 あっという間に暗示を掛け終わりました。

 ……今度は大丈夫ですよね?

 〜〜〜〜〜

 腹に感じる痛みを堪えつつ立ち上がる。
 ソファに寝かされていたようだ。
 ん? 俺は何で気絶したんだ?
「あ、気が付きましたね、優輝さん!」
 メリーが声をかけてきた。
 そういえば、今日から一緒に住むことになったんだっけ。
「あぁ、大丈夫だ…」
「良かった…突然転んで気絶した時はどうしようかと思いましたよ!」
 何故転んで腹を打ったのかは気にしないとして、どうやら介抱してくれたようだ。
 栗狐はというとテレビの教養番組を見ながら油揚げを齧っている。
 …狐だから油揚げ好きなのか。
「ところで、一つ言うが…」
「何ですか?」
 あのこと、忘れたとは言わせんぞ。
「ドアの修理、手伝ってもらうからな」
「あ……」