複雑・ファジー小説

#14 ( No.20 )
日時: 2012/08/17 21:15
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)



 朝。
 いつも通りの時間に眼が覚める。
 別の部屋に寝かせていた筈の栗狐が何故か隣に寝ているのは気にしない。
 とりあえず起こさないように寝室を出る。
 リビングに行くとテーブルの上に一枚の紙が置いてあった。

『用事があるので出かけます。 メリー』

 隣に簡単な朝食が二人前作られていた。
 台所に一人分の食器が洗われているのを見ると俺と栗狐の分らしい。
 いつも時間が結構危ないのでありがたいことだ。
 うん、美味い。
「あいつ、何しに行ったんだ?」
 先にレジェンズを探しに行ったのだろうか。
 確かに早朝なら学校に人は少ないが。
「……ん」
 栗狐が起きてきた。
 耳と尻尾が垂れ下がっている。
 昨日以上にテンションが低い、低血圧らしい。
「おはよう、栗狐」
「……」
 栗狐は何も言わずに席に着き、食事を取り始めた。
 無表情で。
 怖い。機械かお前は。
 程なく朝食を食べ終わる。
「ごちそうさま」
 さて、今日は余裕を持って学校に行けそうだ。
 でも、栗狐を連れて行くわけにはいかないな。
「栗狐、俺は学校行ってくるけどメリーが戻ってくるまで一人で留守番できるか?」
 食事を済ませた栗狐は、徐に箪笥の中に入った。
 あの箪笥の中には何も入っていなかったと思うが、何故唐突に…。
 不審に思って開けてみる。

「……」

 別にメリーと栗狐にどこで寝ろと指定をしたわけではないが、どうしてこうなった。
 あろう事か栗狐は箪笥内を私物化していた。
 布団を敷き、上に電灯を設置していた。
 電気はどこから引いてきたんだ…。
 何というか、不思議な子だ。
「じゃ、じゃあ、行ってくる」
 あまり追求してはいけない気がする。
 時間を無駄にしたくはないし、とりあえず学校に行くことにした。