複雑・ファジー小説
- #15 ( No.21 )
- 日時: 2012/08/17 21:16
- 名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)
「というわけで今日このクラスに転校してきた……」
「メリー・メアリー・ミラーと言います。よろしくお願いします」
「……」
唖然。
朝からクラスが騒がしかった。
転校生が来るという話で盛り上がっていたのだ。
そういえば転校生の情報を持ってくるのって誰なんだろう。
まぁ、どうでもいい。
問題は今前に立っている都市伝説そのものだ。
制服をどこから拵えてきたのか、とかそういう問題じゃない。
朝早くから出かけて転校の手続きでもしてたのか?
「えー、じゃあ、空いてる席——樋口の隣で良いな。 窓際の三つ目だ」
お約束かよ。
先日、隣の席だった川口が転校した。
しばらくの間空席だったのだがこんな展開だとメリーが仕組んだんじゃないかと疑う。
メリーが隣の席に着く。
「よろしくお願いしますね。優輝さん!」
あ、こいつやらかした。
教室がざわりと騒がしくなる。
「あれ、なんで優輝の名前知ってるんだ?」
竜生が聞いてくる。
先生も生徒も誰一人、メリーが教室に入ってから俺の名前を言っていない。
つまりここでメリーが俺の名前を知っているのは不自然なわけで。
「え、あー…」
言葉に詰まる。
どう言い訳すれば良いか。
ストレートに「同居してます」なんて言う訳には行かない。
「同居させてもらってます!」
メリーがストレートに、それも大声で言ってくれた。
しん、と教室が静まり返る。
「……」
やばい、言い訳のしようがなくなった。
「あー、樋口、ホームルームが終わったら職員室来い。ゆっくり話を聞かせてもらう」
こういうのって大抵説教されるのは男の方だよね。
でも実際俺は悪くないんですよ。
メリーの協力をするために仕方なくなんですよ。
いや、協力の話は出さないほうがいい。
メリーが都市伝説だってことは内密だろうし、第一表に出そうとしても間違いなく信じてもらえない。
「どうかしましたか?」
あぁメリー、お前は暢気だな。
俺は通用しそうな言い訳を考えるのに精一杯なんだ。
「えー、今日の連絡だが…」
先生が話を再開するが俺は聞く暇なんて無い。
結局、言い訳を考えるだけで今日のホームルームは終わった。