複雑・ファジー小説
- #17 ( No.23 )
- 日時: 2012/08/18 21:05
- 名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)
「これは酷い…」
画像ではなく、直で見るとよりおぞましかった。
先程(画像が撮られたのは30分ほど前)は校庭に侵食し始めたところだったのが今は校庭の半分に赤と青のカーペットが敷かれていた。
「いけませんね…これはもう病んでるかも…」
「病んで…?」
「大方恐怖による信仰を集めすぎたんでしょう。病んだレジェンズは暴走してるようなものです。気をつけて下さい」
「分かった…ん?」
学校の周囲は警察がいた。
もちろん野次馬を掃ったりしているものだろうが、これでは中に入れない。
「どうする?」
「強行突破します!」
「え?」
メリーが走り出す。
付近にいる警察官五人が対処しようとするが、メリーがいつの間にか持っていた短刀によりまるで悪の組織の雑魚敵のように倒される。
「峰打ちです。安心なさい」
おぉ、かっこいい。
でも警察倒したら駄目だろ。
いや、今は非常事態だ、仕方ない。
「ごめんなさい」
倒れた警察官に一言言って、メリーと共に校舎に入っていった。
「うっわ、校舎の中までびっしり紙が巻かれてるな」
廊下にも蜘蛛の巣のように紙が張り巡らされている。
まるで映画に出てくるブービートラップみたいだ。
「これに触れたら駄目って事かな?」
「ありがちですけどそんな感じでしょうね。問題は…」
ん? 何か含みのあるような言い方だな。
「何故か床に紙が敷かれていない事ですね。学校の内部に誘っているのでしょうか?」
あ、そういえば。
壁にまでびっしり貼られている紙は何故か床にはない。
まるで中に入って来いとでも言うかのように。
「何なのか分からないが、とりあえず行くしかないな」
「そうですね、行きましょう」
しばらく進んだ。
俺はこの小学校に通っていたからうっすらだが記憶はある。
確かこの先は校長室だったか。
「この先からレジェンズの気配がしますね…」
校長室に居るって事か?
てっきりトイレに潜んでいるとばっかり思っていたが…
「っ……」
途端に、なにか眩暈がした。
その場に蹲る。
「優輝さん、どうしました!?」
「だ、大丈夫だ…っ…」
メリーが寄ってくる。
心臓に何か重いものが圧し掛かったような不思議な感覚。
「きっとこの先のレジェンズの影響でしょう。レジェンズが集めた恐怖心が精神を負担してるんだと思います」
厄介な…
「早く退治してしまおう。この感覚は好きじゃない…」
「分かりました」
何とか校長室に辿り着く。
ドアを開けようと取っ手に手を掛ける——
「なっ!?」
「優輝さんっ!」
気が付かなかった。
校舎に入ってから十数分。
見慣れてしまった赤と青の紙。
それが取っ手に巻かれていたことに。
慣れというのは恐ろしいものだ。
判断力を鈍らせてしまう。
手を触れた瞬間それは高速で俺に巻きついた。
そのまま身体中に巻きつく二色の紙。
視界が赤と青に染められた。
「ッ——」
叫ぼうとした瞬間、俺の意識は途絶えた。