複雑・ファジー小説

#18 ( No.24 )
日時: 2012/08/19 09:15
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)


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 優輝さんが、紙に飲まれた。
 あっという間にミイラのように包まれ、そのまま目の前の部屋のドアを突き破って中に入っていった。
 早く助けないと、どうなってしまうか分かりません。
 開いた穴から部屋の中に入っていきます。

 部屋の内部は壁が見えないほど何重にも紙が巻かれていました。
 そしてレジェンズの気配は真正面。
 まるで繭のような球体から放たれています。
 すぐに斬ってしまおうかとも考えましたが、中に人が居る可能性も否めません。
「あなたが事件の元凶ですか?」
 声をかけてみます。
 まぁ病んでるのでしたらまともな返答はされないでしょうが。
「ア……? 誰…ダ…?」
 球体から出てきたそれ。
 まさにミイラのようでした。
 幾重もの二色の紙で作られた二本の腕と頭、そして体。
 体の真ん中辺りから紙は分散し、辺りに張り巡らされた紙の一部となっています。
 きっとこの紙は全てこのレジェンズの体なのでしょう。
「ガ……メ…アリー…!」
 え? 私の名前を…?
「俺様…忘レタ…ト、ハ…言ワセン…ゾ……! メア、リー…!」
 向こうは私を知っているようですが、私はあんなレジェンズ知りませんね。
「どちら様でしょうか。私は貴方の様なレジェンズに見覚えはありません」
「…ウ、ガ…シシ……」
 シシ…?
 紙々しし…!?
「紙々!?」
「ガ…思イ出シ、タカ…! メアリー…!!」
 昔の友人との再会。
 それだけなら嬉しいことですが、こんな状況だなんて。
「何で貴方がそんな事に…」
 彼は確かに、性格が明るいとは言えず、いつも力を求めてた。
 でも彼はこんな事をして力を手に入れるような「子」じゃなかった筈…
「弱カッタ、俺様…ガ強ク、ナルニハ、コウ、スルシカ…ガ……!」
 まだ病みきってませんが、これはもう手遅れかもしれません。
「アアアアァァァァ!!」
 叫びを上げる紙々。
 そろそろ限界ですか…
「……なら、友としてせめて苦しまずに貴方を滅します」
 苦渋の、決断。
 短刀を持つ手に力を込めます。
 普通の短刀とは違う、都市伝説という「異質」の力の発動。
 その刀の名——

「『豊穣人セレスト』…!」

 刀に気が集まり、異質が顕現する。
 今こそ、貴方を救うために、この刀を振るいましょう。
 友とは言え、進んではいけない道を進んでしまった貴方を。
 優輝さんに危害を加えた貴方を許さない。

「覚悟…!」