複雑・ファジー小説

#19 ( No.25 )
日時: 2012/08/19 21:14
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)


〜〜〜〜〜〜

「……ここは…?」
 気が付いたとき、俺は手足を拘束されていた。
 俺を縛るもの、そして視界に映る赤と青の無数の紙。
「そうか、ドアの取っ手に触ったとき…」
 俺はレジェンズに捕まったと。
 つまりここはレジェンズの近くのどこか。
 校長室の近くの部屋だろうか。
 校長室の近くには職員室や視聴覚室があった。
 無数の紙のせいでどの部屋かは判別できない。
「……」
 メリーはこの部屋にはいないようだ。
 恐らくレジェンズと戦っているのだろう。
 とはいえどうするか。
 ここで縛られていてはなんの協力にもなっていない。
 解こうとしてもまるで解けない。
 ……悔しい。
 いざというときに何も出来ない。
「くそっ…!」
 もう一度紙を解こうと腕に力を入れる。

 スッ…

 紙は簡単に解けた。
「え?」
 続いて他の部位が次々と解けていく。
 あっという間に開放された。
 見ると紙は解けたというより切られたように見える。
 誰かが助けてくれたのか…?
 そう思い周囲を見渡すと、見えた。
 拘束されていた他の人を開放している少女を。
 特徴的な尻尾とぴょこぴょこ動く狐耳。
「栗狐!?」
「……」
 栗狐は他の人たちを全員解放した後、俺の近くに来る。
「メリーは?」
「分からない。多分レジェンズと戦ってる…」

「グ…カ……!」

 その時聞こえてきた唸り声の様な音。
 それは頭上から聞こえてきた。
 無数の紙から浮き出てくるように現れたそれ。
 まるで紙で構成されたミイラの様な風貌。
 顔と思われる部分、紙と紙の隙間からは赤黒い光が漏れ目玉のように見える。
 こいつが、メリーの探してたレジェンズ…
「信仰ノ、供、給ガ…無クナッ…タト、思ッテ来テ、ミレバ……栗…狐ォ…!」
 え? 栗狐の名前を…?
「……」
 栗狐は怪訝な表情をしている。
 覚えが無いのか、疑っているのか…
「オ、オ前モ…俺、様ヲ…シシヲ忘レ、タカ……!」
「……紙々…」
 この『赤い紙青い紙』のレジェンズは紙々という名前らしい。
「ソ…ウダ……ドウダ…コノ、姿…! 俺様ハ、絶、大ナ、力ヲ……!」

 スパンッ!

 紙で構成された胴の一部が爆ぜた。
「ガ……」
「栗、狐…?」
 栗狐は今まで見た事のないような眼をしていた。
 怒り。
 冷たく、それでいて煮え滾る様な怒りの風貌だった。
「……」
 手に持っているのは10円銅貨。
 人差し指で銅貨を挟み、親指でそれを弾く。
 回転しながら飛んでいくそれはまるで弾丸の様な勢い。
 銅貨が紙々の体に当たると、それが爆ぜた。