複雑・ファジー小説
- #22 ( No.29 )
- 日時: 2012/08/20 20:59
- 名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)
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俺は弱い存在だった。
自分で言うのもなんだが、性格も暗かった。
周りから蔑まれ、いつも笑われていた。
「学校」に行っても、いつも一人。
限りなく無意味で、限りなくつまらない毎日が続いた。
俺が生きる意味。
そんな事を考えることすらもなかった。
ある日、俺は風邪を引いて「学校」を休んだ。
別に俺が休んだところで、何一つ変化なんてない。
その日の午後。
外が「子供達」の声で騒がしくなり始めた。
学校が終わったのだろう。
無邪気な「子供達」の笑い声は、とても不快だった。
いや、あの時抱いていたのは不快さじゃなかったのだろう。
あれは、憧れ。
「子供達」の仲間になりたいという、願いだった。
その願いは、その直後に僅か叶った。
「クラスメイト」の二人が見舞いに来たのだ。
一人の名前は***。
金色の髪が美しい、「クラス」の人気者だった。
もう一人の名前は***。
栗色の髪を持つ、静かな女子だった。
「***君、風邪は大丈夫?」
「…あ、あぁ……もう、大分良くなった……」
「…お大事に」
たったそれだけだった。
それだけ、たったそれだけの会話。
それが、凄く嬉しかった。
その次の日から、二人は俺に話しかけてくれるようになった。
色々な事を聞かれ、色々な事を聞き、色々な事を話した。
楽しかった。
だけど、俺は相変わらず他の連中に馬鹿にされた。
いつからか、そいつらに俺は恨みを抱くようになった。
「***君、折り紙好きなの?」
「…あぁ」
「赤と…青…」
「…あぁ、大好きな色なんだ」
話をしている間に作り終わった二つのそれ。
「……これって…」
「髑髏…?」
そう、赤と青。
二色の髑髏。
「俺はいつか死神になる。いつか強くなって、俺を馬鹿にした奴らを見返してやる……」
いつしか願いは変わっていた。
力。
強く、強く…
強ク……
……
「アァ…ソウ、カ……俺様…ハ……」
〜〜〜〜〜〜
メリーが着地するのと、紙々が地に伏せるのはほぼ同時だった。
紙々は顔を四つに裂かれ、中の核は飛散を始めていた。
直感で分かる。
このレジェンズは、間もなく死ぬ。
「……ガ…」
紙々がもはや口とも言えぬ口で小さく呻き声を上げた。
「メ…アリー…」
言葉を放つたびに、飛散の速度が増していく。
まるで命を削って話をしているように。
「強…ク……ナッタ、ン、ダナ…」
それは過去に会った事があるような口ぶりだった。
確かに栗狐が知っていたようだからメリーが知っていてもおかしくは無いが。
その言葉はメリーへの賞賛。
完敗の跡を感じさせない、嬉しそうな言葉だった。
「貴方も強かったですよ、紙々。ちゃんとした信仰の集め方をしていれば、きっと私よりも貴方は強くなった筈です」
「…ヤッパリ…間違ッテタ…ン、ダ…ナ……」
その言葉に後悔の念は感じられなかった。
ほとんどただの紙と化し、表情なんて見られなくても分かった。
彼は笑っていた。
メリーに自分の強さを認めてもらえた事への満足感からだろうか。
「アリガ、トウ……メ、アリー…ク、リ…コ……話シテ、タ…時間…楽シ、カッタ……」
彼は全力を出して最期の言葉を告げた。
見えない愉悦の表情のまま、紙々は消えて無くなった。
飛散した赤黒い火の粉のようなものは、メリーの言っていた紙々の「赤い結末」だろう。
そして、俺が関わった最初の戦いの、結末——