複雑・ファジー小説
- #23 ( No.30 )
- 日時: 2012/08/21 09:26
- 名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)
紙々が消えると、学校中に張り巡らされた紙は段々と消滅していった。
「これは…」
「統制を失った紙が消滅を始めているんでしょう。しばらくすれば全て消えますよ」
心臓に圧し掛かってくるような嫌な感覚が、紙々の消滅と同時に無くなった。
「……メリー、大丈夫?」
栗狐が心配そうにメリーに聞く。
「えぇ、少し疲れただけです…」
メリーはふらふらと壁に寄り掛かる。
肩で息をしていた。
「少々信仰の力を使いすぎたようです……」
「信仰の力?」
「はい…信仰の力で私たちレジェンズは存在していますが、異質の能力を発動するにもそれを消費するんです」
異質の力。
メリーと出会ったときに見せてくれた電話の力。
そして恐らく先程の短刀、『豊穣人』と言ったか、あの力も。
全て自分の存在を削って使う力だったのか。
「信仰の力は私達レジェンズにとってHPにしてMPなんですよ」
……どこで覚えてきたんだ、そんな言葉…
都市伝説もゲームとかするのか?
「まぁ、優輝さんの傍にいればすぐに回復しますよ」
…役に立っている、のか?
「栗狐は大丈夫か?」
銅貨を使った紙々への攻撃。
あの威力からしてあれもきっと信仰の力を使ったもの。
それに紙々の反撃で栗狐は頭を斬られていた。
「…問題ない」
栗狐はいつものポーカーフェイスで平然と言った。
本当に大丈夫だろうか。
「あら、もう終わっちゃってたのね」
その時ふと背後から聞こえてきた落胆の混じった声。
「!!」
今この学校には倒れている生徒と教師だけ。
外から入ってくる人なんていない筈だ。
振り向くとそこにはあきらかに小学生とも教師とも明らかに違う女性だった。
「久しぶりの獲物だと思ったんだけどなぁ…」
残念そうに頭を掻く女性は黒いスーツを身に纏い黒眼鏡で目元を隠している。
「何者ですか? この場に居るという事はレジェンズと関係ある人物ですよね?」
メリーが俺の前に出てくる。
栗狐を見ると手に銅貨を持ち警戒している。
女性は、
「今回の事件の大元をあんた達が倒したんなら、あんた達の同業者よ」
澄ました声でそう言った。
同業者?
悪いレジェンズを倒しているのか?
「…貴女のレジェンズはどこにいるの?」
栗狐が聞く。
「あら、すぐ近くに居るじゃない。部屋を良く見ると良いわ」
「部屋…?」
周囲を見てみると、部屋の四隅にそれぞれ人影があった。