複雑・ファジー小説

#25 ( No.37 )
日時: 2013/01/05 17:07
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)

 紙々との戦いの次の朝。
 眼が覚めたのはいつもより三十分早かった。
「……昨日…」
 あの後、気が付いた生徒や教師を連れて外に出ると警察に怒られながらも勇敢な少年少女と賞賛された。
 メリーはテレビ局のインタビューに恥ずかしそうに答え、栗狐はその目をどうやってか掻い潜りさっさと家に帰った。
「九道さんは…どうしたんだろう……」

「手柄はあんた達のものだから、外の連中はよろしく」

 そう言ってそのまま部屋に残っていた。
 多分静かになってから外に出たのだろう。
 結局あの人は何だったんだろうか。
 俺達が居なかったら、代わってあの人が紙々と戦っていたのだろう。
 スクウェアのレジェンズ、四隅舞踏。
 そう名乗っていた。
「スクウェア…」
 聞いたことがある。
 冬の山で遭難した四人の学生がある方法で助かったという都市伝説だ。
 四人で一つのレジェンズ。
 どれも、視認するまで全く気付かなかった。
 気配も全然無かった。
 アレは敵に回してはいけない。
 きっと、メリーと栗狐でも負ける…
「優輝さーん、起きてますかー!」
 部屋のドアが叩かれる。
 メリーだ。
「あぁ、起きてるぞ」
 ドアがガチャリと開けられる。
 制服を着たメリーが「おはようございます!」と元気に挨拶をした。
「あぁ、おはよう」
 …そうか、そういえばどういう訳か学校に入学したんだよな。
「ご飯出来てますよ! 今日はお弁当も作っておきました!」
「ん…ありがとう…」
 メリー、いつから起きてるんだ?


「そういえば、栗狐はまだ寝てるのか?」
 朝食を食べながらメリーに聞いてみる。
「まだ寝てますよ。昨日力を使いすぎたんでしょう」
「え?」
 やっぱり、無理してたのか…
「大方「また」銅貨爆弾でも使ったんですね」
 銅貨爆弾…?
「あれ、爆弾だったのか?」
「正確には銅貨ですよ。あれが栗狐の真の力なんです」
 真の…力…?
「情報操作…いえ、情報改竄でしょうかね」
「情報改竄?」
「栗狐が情報収集が得意なのは知ってますよね?」
 出会ったときに聞いた覚えがある。
「栗狐は情報に介入することでその情報自体を改竄する事が出来るんです」
「えーと、つまり……」
「銅貨の情報を爆弾に書き変えたんですよ」
 ……
 良く分からないが簡単に言えば…
「銅貨を爆弾に変化させたと…?」
「まぁ、簡単に言えばそういう事ですね」
 …恐ろしい。
「だけど情報改竄は一回だけで凄い力を使うんですよ」
 つまりは改竄というのはある物質を無理矢理別の物質に変えるということだろう。
 それが多量の力を使うのはあたりまえだろう。
 ん? ということは……
「あいつ、五発くらい使ってたぞ! 大丈夫なのか!?」
 栗狐のレベルは1だと聞いた。
 そんなレベルで五回も改竄を使って大丈夫なのだろうか。
「ちょっと使いすぎですね……だからまだ寝てるんでしょうね。でも大丈夫ですよ」
 寝て回復してるのか。
 少し不安だが、メリーが大丈夫というなら大丈夫なのだろう。
 しばらくして朝食を食べ終わる。
「ごちそうさまでした。行きましょう、優輝さん!」
「あぁ、ごちそうさま」
 食器を片付け、鞄を持つ。
 今日はいつもより余裕を持って行けそうだ。
 栗狐、今日は黙って行く事になるな…
 かといって起こすわけにも行かない。
「……ごめんな」
 栗狐が寝ているであろう箪笥に向かって言う。
「いってきます」
 弁当を鞄に詰め、メリーと学校に向かった。