複雑・ファジー小説

#2 ( No.4 )
日時: 2012/08/12 20:44
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)


「おっはよー、優輝ー!!」
 教室のドアを開けると俺に向かって走ってくる天災(バカ*)が一人。   *以後「天災」はバカと読む
 予め鞄に入れてある専用物差し(30cm)を取り出し、思い切り引っ叩いた。
「ざんぼぁあっっ!!」
 良く分からない悲鳴を上げて吹っ飛ぶ天災。
 吹っ飛んだ先で何やら生々しい音が聞こえたが気にしない、いつもの事だ。
 席について一息つく。
「おはよう優輝。今日も朝から大変だな」
 そこにいつもどおり話掛けてくる男子。
 これといって特徴の無い、まさに主人公の親友といった容姿の佐山 竜生(さやま りゅうせい)だ。
 ……主人公って何の話だ?
「まぁ、もう慣れたし」
 あの|天災の名前は琴吹 凛(ことぶき りん)。
 認めたくは無いが一応幼馴染。
 黒い長髪の天辺から伸びた触覚のような二本のアホ毛から「□□□□*」という不名誉なあだ名もついている。   *黒光りするアレ
 ただ、そのあだ名を彼女の前で言ってしまうともれなく強力な鉄拳がプレゼントされる。
 中学までは普通だったが高校に入ってから暴走が始まった。
 何か「取られる前に」だとか「他の奴には」だとか良く分からん事を言いながら毎日突っ込んでくるようになった。
 それを俺が物差しで「軽く」追い払う。
「うぇぇ…酷い……」
 ぼろぼろになった凛が寄ってくる。
 頭から何か赤いものが出てる。
「大丈夫かい、琴吹さん?」
 竜生が凛に聞く。
 放っておいても無事なのに。
「大丈夫じゃ、な…い……」
 そういうとばったりと倒れた。
「ちょ、大丈夫!?」
「大丈夫だ、問題ない。いつものことだ」
 どれだけ重症を負ってもホームルームには何事も無かったように笑っている。
 異常な耐久力を持った天災だ。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「きょーつけー、れいっ!」
 その日の授業を終える号令が掛けられる。
 俺は部活には入ってないので授業が終わったらすぐに帰る。
「優輝、そろそろ部活入らないか?」
 竜生が部活の勧誘をしてくる。
 竜生は陸上部に所属していて何か俺が陸上に向いていると思っているらしい。
 別にそんなことないのに。
 100m走の記録だって最高が9秒75*だ。   *2012年6月29日 ヨハン・ブレークさんの記録
「ごめん、俺部活とかやってる時間ないから」
「まったく、入れば絶対良い記録を残せるのに」
 持ち上げすぎだ。
 俺は家事が人並み程度に出来るだけの平凡な男子高校生だ。