複雑・ファジー小説

#28 ( No.46 )
日時: 2012/08/27 21:06
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)

「そっちのお嬢ちゃんが暗示掛けてどうにかなったみたいだけど」
「メリー、暗示なんて使えたのか」
「え、えぇ、まぁ…」
 何で動揺してるんだ?
「まぁそれはおいといて、ここの住人、行方不明なのよ」
「え?」
「有名会社のサラリーマン。ただし一昨日から家に帰ってない」
 たった二日なら行方不明とは言わない気が…
「私とこの子達が調べた結果、あるレジェンズが原因だと分かったわ」
 部屋の奥から顔を覗かせていたレジェンズ、四隅舞踏の一人がぺこりと頭を下げる。
「あるレジェンズ?」
 メリーが食いつく。
 やはりレジェンズが関係していたか。
「えぇ、まだ謎が多いけどね」
 九道さんが一枚の紙を渡してくる。
 それにはある都市伝説についての記述がされていた。
「……星を見る女性…?」

 〜〜〜〜〜〜

「さて、よもやこの程度の用事で我を呼んだのではあるまいな?」
 仕事を終えた後、依頼者に対して放たれた第一声がこれだった。
 最低限に震える唇から出される威厳に満ちた声は恐ろしさを感じさせる。
「それだけだけど? 良いじゃないの、報酬は支払うんだし」
 そういうと、そいつは今まで閉じていた目を僅か開き、不満さを露にした。
「神の為の権能を低級の伝説に行使する事すら稀であるぞ」
 挑発か、若しくは脅しか。
 仕事がしたいのかしたくないのか良く分からないわね。
 どちらにせよ、もう気にはしない。
 一度その気にさせ、力を使わせれば良いだけだったのだから。
「感謝はしてるってば。だから報酬持って早くどっか行って」
 もう用はない。
「あの人」とだけと一緒に居れる場所が出来た。
 嫌な性格だけどその事だけは感謝しよう。
「この子供達、どうやって捕らえてきた」
 変わったことを聞くのね。
 報酬として、そこら辺で子供を二人ほど攫ってきた。
「別に…襲ってきたのよ。貴方が子供集めてるって聞いたからね」
「何も分かっておらぬな。神が求めるのは恐怖を覚えた子供ではなく、無邪気さを忘れぬ「あるべき」子供だ」
 一言で言ってしまえば同じ人攫いのくせに良く言う。
 私達に関わった時点でそんな無邪気さなんて簡単に消えてしまうものだ。
「恐怖を忘れさせる我の事も考えて依頼をするべきだ」
 眠る子供を両脇に抱えて言う。
 持ってく気ではいるわけね。
 噂で聞いただけで何者かも分からない。
 誰にも邪魔されない空間を創造出来ると聞いたから、仕事を頼んだだけだ。
 私より高レベルのレジェンズ、そして非常に高齢。
 そのくらいしか分からないが、多分こいつはこれ以上の何をするわけでもないだろう。
「神に供物を捧ごうとするその心行きは評価するが、もう少し神の嗜好を理解することだ」
 そう言って、もう一度チラと私を見ると、消えていった。

「変わった奴…まぁ良いわ。彼と一緒に居られる。それが、この空間」
 ふふ、ふふふ。
 あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!