複雑・ファジー小説
- #35 ( No.55 )
- 日時: 2012/12/28 20:47
- 名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)
目が覚めたのはいつも通りの時間。
今日も良い天気だ。
「…夢子…友達を紹介したいとか行ってたな…」
着替えつつそんな事を思い出す。
約二年ぶりに俺の元に現れた、夢枕のレジェンズ。
彼女はピンチの時に助けてくれるよう友達に頼むといっていた。
強く、優しい友達か。
やはり嫌な予感はしない事も無いが、あまり冗談を言わない彼女の事だ。本当なのだろう。
「って、ん?」
ふと足元を見ると、一枚の紙切れが落ちていた。
その紙いっぱいに大きく書かれた渦巻きの様な文字。
見る方向によっては、「9」にも「6」にも「の」にも見える。
恐らくは夢子が残したのもだろう。
これは故意に落としていったものだろうか。
だとするとこれは何か意味のあるものだろう。
とりあえずポケットにしまい、リビングに向かう。
朝食時、メリーはずっと黙り込んでいた。
何か考えながらさも煎餅のように目玉焼きを齧っている様は異様にシュールだった。
栗狐は昨日の事は知らないままなので余計に不思議そうだった。
食後、俺はメリーに聞いてみた。
「なぁ、メリー…何を考えてたんだ?」
「あ、優輝さん。いえ…櫛禍様について少し…」
櫛禍。
件の女性が居た空間を創ったという存在の名前だったか。
「その櫛禍って何者なんだ?」
「櫛禍様は人間と神様の仲介役のレジェンズなんです」
「人間と、神様の?」
「はい。神様は人間の願いを聞きいれ、己の力を振るいそれを叶えるという命を持っています。それに対して人間は絶大な信仰を神様に対して注ぐんです」
とりあえず神様が実在することは分かった。
「神様が創りだした人の願いを叶えるための奇跡、そして人間の信仰心をそれぞれに渡すのが櫛禍様の役割なんです」
「え、と…つまり…」
「櫛禍様は平時に神様への謁見を許されている唯一無二の存在なんです」
それはもうレジェンズを超越した存在ではないのだろうか。
神様と人間を繋ぐ非常に重要な存在。
何のレジェンズなのかは分からないが、神様に対する信仰を一旦は全て受け止めているようなものだろう。
メリーが「様」付けする理由も分かった気がした。
「櫛禍様は空間を開き、別世界同士を繋げる力を持っています。基本は神様の居る世界に信仰心を届けるためのものですが…」
「ん? じゃあ昨日のは……」
メリーは昨日の空間を櫛禍というレジェンズが創ったものだと言っていた。
つまりあの場所に居た女性は…
「そこが不思議な点です。あの女性は間違いなく普通のレジェンズでした。それのために空間を創る事なんて普通しません」
「何か非常時って事か?」
「はい。低レベルのレジェンズにわざわざ空間を提供する程の何かが…」
「……」
神様に何かあったと?
もしかしたら、今後関わっていくことになるかもしれない。
頭に入れておいたほうが良いだろう。