複雑・ファジー小説

#38 ( No.59 )
日時: 2012/09/15 21:11
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)


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 何が、起こったのだろうか。
 最後の一撃が決められようとした瞬間、何かが現れ、それを受け止めた。
 勿論救道はそれに動揺せず、先にそれを退治しようとする。
 それは攻撃を喰らう前に掌を救道の仮面に押し当てた。
 するとどうだろうか。
 仮面をつけていた顔諸共、消し飛んだ。
 首の無くなった身体はそのまま倒れこみ、消えた。
「——ふぅ」
 それは息を吐きながら構えを解く。
 赤と黒を基調とした胴着を着た男性。
 黒い髪を後ろで束ねている。
 背は低めだ。恐らく160センチくらいか。
 しかしその体つきはしっかりとしており、異様な威圧感がある。
「無事か、少年」
 低い声で言うその男性の口元は嬉しそうに歪んでいる。
「あ、貴方は…」
 正直、死ぬと思っていた。
 その攻撃を受け止め、簡単に倒して見せた。
「主を助けに来た。夢子に頼まれたでな」
 夢子が友達と言っていた存在。
 つまりは、
「貴方もレジェンズ?」
「嗚呼…うむ、そういう事になるらしいな」
「え?」
「いや、何でもない。気にするな」
 何かを隠しているようだが、別に助けてもらえるのなら気にしない。
 メリーらも隠していることはあるらしいし。
 レジェンズという存在と関わり始めてから大雑把になった気がする。
「名前は何て?」
「そうさな…儂の事は神槍しんそうとでも呼ぶと良い」
 神槍。
 それを名乗るに相応しい力を持つレジェンズだった。
 ……レジェンズ?
「貴方も都市伝説?」
「ふむ…その都市伝説とやらがどういった類のモノであるかは分からぬが……夢子に呼ばれたという事はそういう事ではないか?」
 何だそれは。
 都市伝説なのか、違うのか、曖昧だ。
「まぁ、それはともかく。アレはまだ終わっておらん。止めを指しに行こうではないか」
 そうだ。救道を倒して終わりではない。
 点道、線道、虎道。
 四隅舞踏はまだ三人残っている筈だ。
「メリーたちが心配だ、早く行かないと!」
「む? 先と同じ気を持つ者の周りに異質の気は無いが?」
 えっと、つまり…
「今し方二つの気が消えた。残る同質の気は一つだ」
 良かった。メリーと栗狐は戦い、勝利したらしい。
 メリーはともかく、栗狐一人で勝てるかどうか心配していたが杞憂だったようだ。
 …それ以前に自分が勝てるかどうかが不安だったが。
「なら、残り一人のところに行こう! メリーたちも向かっているはずだ!」
「優輝さん!」
 あれ?
「メリー?」
 噂をすれば何とやら?
 メリーが此方に走ってきた。
「良かったです。無事だったんですね…って……どちら様で?」
 すぐに神槍の方を向き、警戒の姿勢を取る。
「呵々! 心配するな、この少年の護衛を頼まれただけよ」
 その警戒を一笑し、歩いていく。
「え、どこに…」
「どこにも何も、残党を狩りに行くのだろう?」
 どうやら最後まで付き合ってくれるようだ。
「あの、優輝さん…あの人は…」
「……あー、知り合いの友達のレジェンズらしい。とりあえず味方だから大丈夫だ」
 夢子の事は伏せておいた。
「なら構いませんが…正体の知れないレジェンズには注意したほうが良いですよ」
「あぁ、それは分かってる。でも実力は本物だ…ところで…」
「どうかしましたか?」
「栗狐は?」
「あ、忘れてました」
 おい。
「栗狐はまだレジェンズですからね。人である優輝さんよりは持ってくれるだろうと思って後回しにしたんですよ」
 何か聞こえが悪い。
 優先順位とかそういう事なのだろうが。
「まぁ、とりあえず勝利はしたらしいけど…」
「なら多分休憩中じゃないでしょうか。彼女程のレベルだとあのレジェンズたちの一人を倒すのに随分と力を消費するでしょうから」
 馬鹿にしてるようにも聞こえる。
 休憩中というのなら良いが、断定は出来ない。
 どうしよう。一度見に行ってみるか。
 とは言うものの、どこに連れていかれたかも分からない。
「おい、主等、どうしたのだ?」
 いつの間にか随分と先に行っていた神槍から声が掛かる。
「優輝さん、今は行きましょう。彼に付いて行けば残る一人の場所には着くでしょうし、その一人が栗狐を襲う可能性も否定できません」
 つまり栗狐が襲われる元を断てと。
 なるほど、それが良いかもしれない。
 残る一人が居る場所に九道さんが居る可能性も高い。
 あの人には、問い質さないといけない。
 何故俺達を裏切ったのか、と。
「良し、行くぞメリー!」
「分かりました!」