複雑・ファジー小説
- #4 ( No.6 )
- 日時: 2012/08/12 20:45
- 名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)
「ちょ、大丈夫!?」
俺は思わずその少女のもとに走っていた。
「どうしたの?」
と聞くと、
「…えぐっ…人を……探して…ヒック……るんで、す…」
しゃくり声が混じっていたがとりあえず分かった。
誰か人を探していると。
嫌な予感しかしないが一応聞いてみる。
「……誰を?」
「樋口…優輝さん、です…ヒグッ…」
「えっ」
「えっ」
思わず聞き返したのが仇となったか。
少女が此方の顔を見た。
「……」
「……」
しばらくの沈黙が流れる。
そして、
「ああああああああああああ!!??」
驚愕の表情で此方に詰め寄ってきた。
「だああああああ!?」
肩を掴まれ、咄嗟に引き剥がそうとするが、思った以上にその力は強く、びくともしなかった。
「な、な、な…」
「…な?」
「何で夢と違う行動するんですかああああああああ!?」
「えええええええええ!!??」
〜〜〜〜〜
結論から言うと、少女は俺を探していたようだ。
少女は俺に夢を見せ、その夢と同じ展開になるように行動していたらしい。
しかしデジャヴを感じた俺が夢と違う行動をしたせいで少女は夢と同じ行動が出来ず、結果迷子になったようだ。
「まぁ…なんだ、ごめん」
「いぇ…こちらこそ……」
一応俺が悪いっぽいので謝っておくと少女はガラス玉のような双眸を潤ませながらも許してくれた。
「ところで、どうやって君は俺の夢を操ったんだ?」
夢を操る。
人間にそんな不思議な能力は無い。
それが出来る以上、彼女が人間ではないことは明確だった。
幽霊、妖怪、神。
人知を超える何か。
きっと彼女はそんな存在なのだろう。
「人々の信仰で生きている以上、人の意識に介入するくらい簡単なことなんですよ」
「信仰で?」
人の信じる心。
それで生きているということは、やはり神の類か。
核心を突いてみることにしよう。
「率直に言うけど、君は何者なんだ?」
「あれ? 言ってませんでした? メリー…」
「あ、名前じゃない」
どこか抜けているようだ。