複雑・ファジー小説
- #42 ( No.63 )
- 日時: 2012/09/26 21:12
- 名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)
「我は立道……。スクウェアの「五」……」
四人の筈だった四隅舞踏の五人目。
立道と名乗るそれは異質の中でも異常たる存在だった。
「立道。再びの命の供給を」
点道が言うと、
「——」
立道から三つの光が零れ出る。
それが地に着くと、突然に人型を形成した。
「なっ…!?」
寸胴の様な偉丈夫。
身軽そうな小柄。
すらりとした細身。
線道、虎道、救道。
倒れたはずの四隅舞踏の三人だった。
「そんな、何故……」
メリーすらも驚愕している。
そんな中、神槍はそれらを静かに見据えていた。
「成程、あ奴達が柱とすれば、天の男は屋根。五人で建築物の象徴か」
点道、線道、虎道、救道の四人が四隅の柱。
それらの存在で支えられ、逆に支える存在でもある。
「四人を潰して駄目ならば答えは一つ。天の男を討てば良い」
神槍は簡単に言ってみせた。
「どうするんですか? 本体が力の供給により連中を無限に生成出来るならジリ貧になりかねませんよ」
「あぁ、主達「二人」が戦っている間に「儂達」が奴を討つ」
ん?
今この場にいるのは俺、メリー、神槍、そして九道さん。
蹲って震えている九道さんを頭数に入れているわけではないだろう。
という事は三人。
「二人」と「俺達」は共に複数形。
つまりその二つは三人では成立しないわけで。
この場に居ない筈のもう一人の頭数。
それは唐突にやってきた。
俺とメリーの間を吹き抜けていく風。
風を纏った一つの弾丸。
「だはははああああぁぁぁ!!」
偉丈夫の男——線道が高らかに笑いながら一枚のトランプを投げた。
トランプは途中で同じく弾丸となり、風を纏う弾丸に直撃した。
威力で競り勝ったのは風を纏う弾丸の方だった様で向こう側に強い風が吹く。
損傷を与える程度には至らなかった様だが、今の威力。
背後からの援護。
「多少疲労しておる様だが、戦えぬ程では無いだろう」
その存在は人通りの多い表通りからゆっくりと歩いてきた。
ふらふらとした足取りから、神槍の言った通り疲労していることが目に見えて分かった。
「……栗狐」
心配そうにその名を呼ぶメリー。
それに応える代わりに、手に銅貨を構えながら、栗狐は微笑んだ。