複雑・ファジー小説

#43 ( No.64 )
日時: 2012/10/05 20:50
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)



 栗狐の無事を喜ぶ暇すらも無い。
 メリーと栗狐があの四人を相手し、俺と神槍が立道を倒す。
 そういう事らしい。
 しかし、
「俺に何か出来る事があるのか?」
 あくまで俺は普通の人間だ。
 戦闘力で言えば、今この場に居る中で一番下だろう。
「無論、主にしか出来ぬ事がある」
 俺にしか…出来ない?
「少年に準備をさせる。主達はあ奴達の相手をしていてもらいたい」
 神槍がメリーと栗狐に言った。
「……分かりました」
「……」
 少し間をおいて、メリーが肯定する。
 栗狐も何も言わずに頷く。
「うむ、では頼むぞ」
「話し合いは終わったかね?」
 点道が切り出す。
 決戦の始まりだ。
「ええ、話の続きは貴方達を倒してからで良いでしょう」
「……」
 メリーが挑発的に言う。
 手に握られた『豊穣人』が唸る。
 栗狐も黙って銅貨を撃ち出す構えに入る。
「ふふ、勝利を確信しているな?」
「結構じゃないか! 慢心する程の力、戦うに相応しい!」
「馬鹿言うなよ。面倒なんだから」
「さあ開演だ。存分に愉しめ」
 四人がそれぞれ構える。
 点道は長身の刀。
 線道はトランプ。
 虎道は両手に小刀。
 救道は何も持たず、拳で。
 それぞれが別々のものを武器とする。
 違う武器を使った抜群のコンビネーション。
 それがあのレジェンズ、四隅舞踏の本質らしい。
「メリー、栗狐。頼むぞ」
「お任せを」
「……」
 二人が四人に走っていく。
 戦闘が始まると、神槍が此方を向く。
「さて、主、準備は良いな?」
「何をすれば良いんだ?」
「儂はこのままでは力を出し切ることが出来ぬ。そこで、主の身体を借りたい」
 救道を一撃で倒したアレが全力ではない、という事らしい。
 いや、そこじゃない。
「身体を、借りる?」
 何やら不穏な響きだった。
「うむ、憑依と言った所か。案ずるな、身体を操作するのは主だ」
「憑依…? いや、良く分からないんだが」
「儂の力を主に預ける、と言った方が正しいか。それにより主は儂の力をそのまま使用できる」
 つまり、神槍の力は他人に預けないとその本質が現れないと。
 俺がレジェンズの力を得、レジェンズと戦う。
 一瞬、恐怖が襲うが、それはすぐに消えた。
 今は恐れている場合ではない。
 目の前の強敵を倒さなくてはならない。
「分かった。やるよ」
「呵々、思い切りが良いな。儂好みだ!」
 どう言った意図の言葉か分からないが、何となく嫌な予感がした。
「さて、では行くぞ。力を抜け」
「……」
「スゥ……フゥ……」
 神槍が息を吸い、ゆっくりと吐く。

「覇!」