複雑・ファジー小説

#44 ( No.66 )
日時: 2012/10/22 21:15
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)

 神槍の掌が胸に当たる。
 一瞬、凄い衝撃が俺を襲った。
 何やら熱いものが流れ込んでくるような感覚。
 空っぽだった入れ物が満たされていく。
 神槍の姿が朧気になっていく。
 人の身体に憑依して力を100パーセント引き出す。
 それが神槍の能力。
 神槍の姿が完全に消えるとズシリと体が重くなる。
「っ……!」
『気をしっかりと保て。主の力量ならば制御できる筈だ』
 直接心に響いてくるような神槍の声。
 既に神槍は俺に憑依しているらしい。
 力が溢れ出てくる。
『心を落ち着けよ。儂が補助する』
 その声を聞き、深呼吸をしつつ落ち着く。
 重苦しい感覚が消えていく。
『そうだ。それで良い』
 少し手を動かしてみる。
 どうやらいつも通りに動かせるようだ。
 しかし、やはり常と違うのは、身体の内部から湧き出てくるこの力だ。
『簡単に戦いを教えよう。儂の言う通りに動いてみよ』
 メリーと栗狐は戦っている。
 彼女達が頑張っているうちに、早く戦い方を覚え、立道を倒さなくてはならない。
「分かった。頼む…」
 本当はこんな事をしている時間など無いだろう。
 いかし、だからこそ確実に。
 俺が立道を倒さなければならないと思った。

 〜〜〜〜〜〜

「やはり、四対二は辛いですね……」
 肩で息をしながら栗狐に言います。
 しかし栗狐ももう疲れが出ているようで、相手の攻撃に反撃をするので精一杯。
 さすがに分が悪いと感じます。
「この程度か?」
 あの点道とかいう男は、一々癇に障るような言葉を…
「ははははは! さぁ、もっと俺を楽しませろぉ!」
 暑苦しい、というより鬱陶しい。
「さっきはよくも…せめて残酷にこの世から去ね!」
 向こうから吹っ掛けてきた喧嘩の癖に戯言を…
「神すら霞む神楽舞を…共に舞おうではないか…!」
 言い回しが良く分からない。
 …しかし一つ、良く分かったことがあります。
 この連中とは絶対に分かり合えないと。
「メリー……銅貨がそろそろ……」
 栗狐も武器とする銅貨が切れてきたようです。
 短期決戦と行きたかったところですが、どうしましょう。
 案外向こうもしぶといようです。
「栗狐…後銅貨は何枚ですか?」
「……三枚」
 もう少し早く言うべきではないでしょうか。
 いや、この際それでも構いません。
「…………、出来ますか?」
「……多分、出来ると思う」
「分かりました。頼みますよ」
 作戦を報告し、連中の誘導に向かいます。