複雑・ファジー小説

#45 ( No.67 )
日時: 2012/10/22 21:15
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)

 銅貨は三枚、それら全ての改竄が成功すること。
 そしてそれが巻き起こす「風」が予定通りの効果を発動すること。
 この二つが成立しないと、寧ろ勝てない。
 まず初めに、連中を一点に集めることからです。
「はっはぁ! どこへ行く!?」
 吼えながら追いかけてくる偉丈夫。
 彼は単純なようです。
「貴様、逃げるのか!?」
 小柄な男も追いかけてくる。
 仕返しに執着しすぎて辺りが見えなくなっているようです。
「逃げるも一興……追うもまた一興……!」
 こいつは黙ってて欲しい。
 一々コメントに困ります。
 まぁ、別に構いません。
 作戦通り、連中が一箇所に集まった。
 しかし、ここからです。
「栗狐!」
「っ……!」
 合図を送り、『豊穣人』を上空へと放り投げる。
 意外な行動に連中はその短刀に目を向ける。
 そこに撃ち込まれる栗狐の銅貨。
 風を纏う弾丸が、細身の男を撃ち抜きました。
 まず、一人。
 二撃目、三撃目は一撃目の風に乗せて。
 何度も見た攻撃なら簡単には喰らってはくれないでしょう。
 ならばこれまでとは違う使い方。
 あの風自体には攻撃力などないと思い込んでいるでしょう。
 だから、風に銅貨爆弾を仕込んでいる。
 二つの爆発。
 小柄な男と、偉丈夫が爆発に飲まれ、消える。
 最後に私が上空まで飛躍。
 投げていた『豊穣人』を掴み、長身の男に斬り掛かります。
「……ふっ」
 しかし斬撃は、男には届きませんでした。
「っ…」
 いや、しかし、何故。
 手がこれ以上進まない。
 何かにがっしりと掴まれているように、動かない。
「全く、小細工を……」
「なっ!?」
 それは、撃ち抜き、倒したはずの細身の男の声でした。
 周囲を見ても、それらしき人影すら見つかりません。
 栗狐も何者かに拘束されているようで、必死に何かから抜け出そうとしています。
「総ては闇——幻——泡沫の夢——」
 天の男——立道と言いましたか、が良く分からない言葉を並べ立てています。
 闇、幻、夢。
 ——、
 現実じゃ、ない!?
 今見えている世界は、現実ではない。
 試しに足元にあった小石を蹴ってみると、途中まで普通に転がり、しかし突然に弾かれるように止まりました。
 スクウェア、四方、壁。
 …部屋。
 あのスクウェアのレジェンズの真の力。
 都市伝説の通り。
 暗闇の中で、正体の分からない何者かによって繰り広げられる異質。
 彼らの能力もそれに関連するもの。
 即ち、相手の視界を潰した上での奇襲。
 栗狐の爆弾も、決まってなどいない。
 全て幻だった、と…
 私達は連中によって作られた部屋で踊っていたに過ぎない。
 ……優輝さんは。
 優輝さんは連中と戦っていたわけではない。
 もしかすると、この幻術の範囲に入っていないかも。
 ——助けてくれる。
 きっと、助けてくれる。
 今の私には、信じることしか出来ません。
 優輝さんがこの状況を打開してくれる事を——