複雑・ファジー小説
- #5 ( No.7 )
- 日時: 2012/08/12 20:46
- 名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)
「メリィィィィィ————・メアリィィィィィィィ————・ミラァァァァァ————!!!!」
夢の中とはいえ、あんなダイナミックな自己紹介をされては忘れようが無い。
メリー・メアリー・ミラー。
それが彼女の名前だろう。
そういえば…
「私こそ、この世に名高い世界最強の「レジェンズ」…」
こんなことも言っていた気がする。
「レジェンズ」。
それが一体何を意味するのか。
直訳で…伝説?
文字通り伝説の存在、そういうことだろうか。
「レジェンズってのは何なんだ?」
少女、メリーにそう問うてみる。
「レジェンズというのは、信仰によってこの世界に具現化した『都市伝説』のことなんです」
都市伝説。
どこからともなく生まれ、人を介して伝わっていく口承のことだ。
愉快なものから不気味なものまで様々なものがあり、知ってしまうと不幸が訪れるなどの話も多く出ている。
学校の七不思議も言ってしまえば都市伝説の一つだ。
都市伝説にはごく少数の人にしか伝わっていないローカルなものから世界的に有名なものまであり、その数は無数とも言っても良い。
つまりは目の前に居るメリーもまた、都市伝説である存在ということか。
「都市伝説…メリー……」
一つ、思い当たることがある。
「……『メリーさんの電話』?」
「はい。私はメリーさんの電話のレジェンズ、『メリー・メアリー・ミラー』です」
メリーさんの電話。
その正体は捨てられた人形だという。
電話を介して自分の居場所を伝えることを繰り返し、最後の電話の内容は「自分の背後に居ること」らしい。
「……」
そんな有名な都市伝説が今、俺の目の前に居る。
その状況が果たして信じられるか。
いや、信じられない。
「…証拠」
「へ?」
「君が『メリーさん』だっていう証拠はある?」
いまいち、確信が出来ない。
今自分が置かれている状況が、すでに常識を逸している時点で。
きっとこれは悪ふざけか何かで、夢云々は奇跡的な確立で偶然話が合っているだけだと。
そう信じていたが、それは簡単に覆された。
『ピリリリリリ…』
鳴り響く携帯の着信音。
携帯を取り出して見て見ると、番号は「111*」。 *111はメリーさんの電話番号だという。実際はNTTの試験放送の番号らしい
不気味だが耳にあて、着信ボタンを押してみる。
「…もしもし」
自分は信じたくなかっただろうか。
信じたくなくても、内心信じていたのかもしれない。
悪ふざけだと思いたかった目の前の少女、メリーの正体に。
『もしもし、私メリーさん…』
電話越しに聞こえる声は、すぐ近く、というより目の前からも聞こえた。
「今、貴方の目の前に居るの」
この出来事が、俺の日常を保ちながらも少しずつ脱線させていく。
その引き金となるのであった。