複雑・ファジー小説

#6 ( No.8 )
日時: 2012/08/12 20:47
名前: 星の欠片 ◆ysaxahauRk (ID: t7vTPcg3)



「信じました?」
 こんな能力を見せられたら(聞かせられたら)信じるしかない。
「あぁ…」
 目の前の少女が都市伝説。
 その事実に未だに違和感はあるが、間違いはなさそうだ。
「ところで、何で俺の所に?」
 問題はそこだ。
 世にも有名なメリーさんが此処にいるという事実。
 それは何故なのかと。
「実は、貴方に協力してもらいたくて」
「協力?」
「はい。レジェンズはもとになった都市伝説そのもの。つまり悪い都市伝説は悪のまま具現化してしまいます」
 実際都市伝説のほとんどは誰かが死んだり悪いことが起こったりするものだ。
 それ故に具現化される都市伝説も悪い存在が居るということか。
「だから悪のレジェンズを倒すのを手伝って欲しいんです」
 都市伝説。
 やはりそれは人の理を超えた存在なのだろう。
 きっと人よりも強い力を持ってるだろうし、超能力のような力も持っているはずだ。
 先程メリーが見せてくれた電話連絡も、きっとレジェンズが持つ不思議な力の一つだろう。
「それ、きっと無理だよ。俺普通の人間だし」
「そうなんですか? 情報によればこの辺りで最も優秀な人なんですけど」
「いや、そんなはずは……情報?」
「街に一人でも都市伝説を信じる人が居れば、自然と情報は集まるものですよ」
 都市伝説は口承で伝わる。
 人の情報も同じように人を通じて伝わっていくということだろうか。

「レジェンズたちの中では有名ですよ、貴方のこと。成績は学年一位以外を取ったことが無く、運動能力も世界大会の記録並み。
 およそ取得できる限り全ての資格を取得し、完璧な存在だって」

 誰だそんなこと広めた奴。
 いや、一応事実なのだが、俺はそんな風に有名になりたくて努力していたわけじゃない。
 『頑張ればきっと結果になる』。
 父の言葉だ。
 子供を放って旅に出てしまうほどの自己中心的な父親であるが、その言葉はきっと真実だろうと思い、あらゆる努力をしてきた。
 それはいつのまにか、都市伝説たちにまで有名になったらしい。
 誰だよ噂とかしてるやつ。
 余計なことしやがって。
 こういうのもなんだが俺はあまり目立つのが嫌いだ。
 なのに努力云々というのも可笑しな話かもしれないが。
 …それでも平凡な男子高校生でいたい。
 だから出来る限りそういられるよう「にも」努力してきた。
「……分かった。やるよ」
 俺の中で何か吹っ切れたらしい。
 気付けばそう言っていた。
「それでこそ優輝さんです!」
 目立たないように頑張ればいいだろう。
 都市伝説なんて不可思議な敵を相手にするわけだし。

 ……吹っ切れてなかったみたいだ。