複雑・ファジー小説

Re: ブレイド*ブレット [刃と銀の銃弾] ( No.6 )
日時: 2012/08/19 23:17
名前: ガリュ (ID: t3n5DtaJ)

 1神の能力をもつ者たち 序章『始まり』


 空いっぱいに輝く数え切れないほどの無数の星。その空の中央に白く輝く満月。そして満月に照らされる街。空は輝いているのに月が見下ろす街は絶望的だった。人々に笑顔はみられなかった。

人々から聞こえてくるのはどれも同じような話ばかりで何回も同じ話を繰り返している。周辺には建物の瓦礫で埋め尽くされていて瓦礫の隙間からは土埃を被った冷たい手がのぞいている。もっと遠くへいけば鉄骨に貫かれた死体も沢山あることだろう。

まだ10歳にもならない少年でもこの地獄絵の景色に理解が出来た。少年のかたわらには食べ物を欲しがるやせ細った猫。少年はそっとその猫を撫でてやった。

「おまえも…僕みたいだな。」

少年は目を細くして言った。突如、ものすごい雄叫びが人々の耳に襲い掛かった。人々が悲鳴をあげ、指をさす方向には空を翔る生き物がいた。

 頭から体にかけて白い馬の形、手足は黒い熊の形で尾は白のニワトリの尾、そして鳥の翼がついていた。そう、合成獣(キメラ)だ。そして合成獣と戦っているのは銀髪の男性だった。たぶん、紅の少年より四つほど上だろうか。銀髪の男性は日本刀で合成獣と戦っていた。

 合成獣の口から光線が放たれる。その光線の一つは紅の少年目掛けてとんでくる。少年は猫をぎゅっと抱きかかえて歯をかんだ。ズガンという音で少年は目を開く。自分には傷一つついていなかった。痛みもない。

 そして少年はやっと気がついた。自分の左腕を掴んでいた紅のスーツを着た女性に。少年は目を見開いて言った。

「貴方は…誰ですか?」

女性は不敵に笑った。
「私?私は崎原令華。あいつの担任だよ。」
そう言って女性は銀髪の男性を見た。
「担任?つまり…戦闘狩会社の人?」
「そうだよ。よくわかったね、ぼうや。」

銀髪の男性は合成獣が放つ光線をかわしながら合成獣に接近して隙を狙って切り裂く。合成獣は鮮血をふき、砂ぼこりを巻き上げながら向こうの道路に墜落した。銀髪の男性も地面に着地した。

「ぼうや、助けてあげようか?きっとこれは私は何かの縁だと思っている。」
「どうして?」
「君の瞳の奥に…すごいものがあると思ったからさ。どうだい?私のところにこないかい?」

少年は暫く考え込むと真直ぐな目で女性を見た。


 「行きます!強くなれるのなら、行きます!!」


少年は決心した。守る力を…強い力を得るために——。