複雑・ファジー小説
- Re: FlowerSpirits 〜戦場に狂い咲け〜 ( No.2 )
- 日時: 2012/09/07 18:55
- 名前: バチカ (ID: LuHX0g2z)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode
何故、戦わないの。何故、殺さないの。
こんなに私は強く、美しいのに。
そんな私を認めてよ。だって私は花だから。
誰かに愛でてもらえなきゃ、意味、ない。
とある茂みのある丘の上、静かな昼過ぎ。
「そんなの……だけ。お前だって……だろ?」
誰かの細々とした話し声が聞こえておりました。
「……だってお前も……じゃないか……。」
丘の上にみえる人は独りだけ。それなのにその声の調子はまるで誰かに語りかけているようだ。
「わかるだろ?……ならさ、なぁ……。」
男性的で淡々とした口調、影からしても遠くから男だとわかる。まだ15を超えたばかりの若い男だ。
「……知らないさ……つまらない……意識が……。」
一本拍子の声が、ほんの少しだけ荒ぶった。気分を害したように。
少しすると、少年と見えない誰かの間に流れる会話が途絶えた。傍からみればまるで潜む敵に感づいて息をのんだように見える。しかし少年は少しも表情を変えず、どこか一点をみつめながらこう言った。
「ただのスズランだよ……気にしないで。」
その言葉が聞こえると、すぐ近くの茂みがばさっと音を立てて葉を散らす。なかからひょっこりと、誰かが姿を現した。
「なぁ〜んだぁ!!気づいてたんだぁ!!」
出てきたのは、少年よりもいくつか年上と見える女性、銀髪の髪の毛を肩まで垂らし、キラキラした大きな瞳は愛想よく少年に笑いかける。「みつかっちゃったぁ〜」とぺろりと舌を出して。
「あんなに、息を洩らして、気づかない方が可笑しいよね。」
これは女性に言ったのではなく、どうやら空気のような話し相手に同調を求めているらしい。
「え〜?マジぃ?あたし、ちゃーんと忍者のように静かにしてたのになー〜」
人差し指だけ建てて、手を組んでふざけて見せる。少年は虚ろな瞳で一瞬だけ女性を見ると、すぐに目を逸らした。でも別に、「厄介なものに絡まれた」とか、かったるそうにしているようでもなく、ただぼうっと一点をみつめる。無気力で無関心そうな赤い瞳には、力がこもっていない。
風が、また吹いた。