複雑・ファジー小説
- Re: アセンション ( No.31 )
- 日時: 2012/09/30 17:59
- 名前: デミグラス (ID: .bb/xHHq)
「つまり……囮ってことか?」
無表情でダニエルの提案に返答するデイビット。
「そうだ。嫌なら俺が」
「嫌なわけないだろ。逆に、俺が全員殺っても文句言うなよ」
しかし、デイビットは今置かれている状況に、あまりにもミスマッチな不適な笑みを浮かべて、腰のベルトに装着していたフラッシュバンを手に取り、ピンを引き抜く。
挑戦的なのか、ただの馬鹿なのか、ダニエルには分かり得なかった。
デイビットの思考や言動を予想することは容易だ。近年稀に見る無類の戦闘好きなのだから。
ダニエルが小さく頷いたことを確認すると、一向に止まらない銃撃の発端に向かって、フラッシュバンを投げる。
テーブルから飛び出し放物線を描いて間近に飛んできた物体に、敵兵たちが気をとられたため、銃撃は一旦止むが、刹那、破裂音共に部屋一帯を閃光が駆け抜ける。
その一瞬の出来事を身を潜めて回避した2人。視界を遮る光に苦しみ、呻き声を上げながら目を押さえる敵兵を尻目に、ダニエルは目標へと一直線に走っていき、扉を開けて廊下へ出ていった。
その間、デイビットは立派な遮蔽物として機能しているテーブルの上部から顔と両腕を覗かせて、M16を構える。セレクターレバーをSAFEからAUTO(連射)に切り替え、視界の真ん中にいた1人の敵を軸に、左右に銃身を振りながら弾を放ち始めた。
不幸にもオペレーションZEROで最も危険な男に、敵として巡り会ってしまった複数の兵士たちは、何がどうなっているのか把握出来ない状況の中で、不規則に放たれる弾丸に頭、腕、脚、腹、と様々な場所を打ち抜かれ、その度に部屋が高速飛沫血痕で汚染されていく。
中には最後の足掻きに、AK-47で所構わず乱射する者もいたが、見えない敵射手に命中することは叶わず、逆に味方に誤射するばかりで、集団の壊滅を急かすことになった。
20発の弾丸を撃ち終え、見える範囲の敵を全て排除したデイビットは、再びテーブルに全身を隠す。
死体の数は目測で7体。最初にテーブルに隠れる前までは、きちんと立っていたはずの、こちから向かって部屋の左右の壁際に1つずつある倒れたテーブル。
運が良かったのか、状況把握能力が優れていたのか、フラッシュバンが投げ込まれた直後、残りの3人はそのテーブルに身を潜めたようだった。