複雑・ファジー小説
- Re: アセンション ( No.38 )
- 日時: 2012/10/28 23:45
- 名前: デミグラス (ID: .bb/xHHq)
と、その時、本部から無線機を介して連絡が入った。
『こちらCIA本部。ライアン、カール……落ち着いて聞いてくれ』
その言葉で、2人は間違いなく悪い知らせだと確信し、ライアンは「何ですか?」と不安そうな面持ちで続きを促す。
『先程、デイビットとダニエルが敵に捕らわれた。』
「捕らわれた!?」
驚きの余り、ライアンは自分が置かれている状況などスッカリ忘れて叫んでしまった。
それもそのはず。今まで数々の修羅場を渡り歩いてきたベテラン兵士の2人が、こんな任務で敵に捕まるなど、予想だにしなかったのだ。
『2人はカストロの部屋にある模様で、生存は確認済み。目標を変更したいところだが、上はそのまま作戦を続行するよう指示してきている。』
現場の2人は深く溜め息をついた。
世界情勢の変化や、技術の進歩など、戦争の体系は時を経るごとに変わる。しかし、兵士を消耗品としか考えないお歴々や、それを我が国のためと受け入れる兵士たちだけは、いつの時代も変わらない。
しかし、同時に、その中でも仲間を決して見捨てない、数少ない兵士もまた、常に存在している。
『だが、このような上の判断に従うつもりは毛頭ない。これより、最優先目標を2人の救出に変更。本部も、オペレーションZEROに対する支援は惜しまない。』
「ですが、バレたらそちらもただではすまないのでは?」
連絡が入ってから初めてカールが口を開いたが、「こちらで上手く対処する」と、その心配も一蹴される。
しかし、その間に、他人の立場的な問題を心配した彼の背後から、1つの銃口が迫っていた。
『いいか。カストロは既に、君たちを見つけ次第、捕らえるか、抵抗するようなら射殺するよう命令している。これを利用させてもら……』
「カール! バンッ!!」
突如、響いた叫び声と、直後に拾われた、あまりにも聞き慣れている発射音を残して、通信は途絶えた。