複雑・ファジー小説
- Re: アセンション ( No.39 )
- 日時: 2012/11/04 12:25
- 名前: デミグラス (ID: .bb/xHHq)
椅子に縛りつけられ、複数の兵士がただずむ部屋の中、デイビットは重くのしかかる瞼を上げ、うつ向いた視線ゆっくりと前に向ける。
「ようやくお目覚めか。どうだね?気分は」
そう呼び掛けてくる声の主は、気絶から解放されたばかりのデイビットを見ながら、彼の目前に立っていた。
「答えたら縄をほどいてくれるか?……カストロ」
自身の背中に回され、縄に縛られている両手首を動かしながら、質問で返す。
実際は、後頭部を一撃殴られただけなので、頭が少し痛むだけで意識はハッキリしていた。
「ほどいてやってもいいが、それはお前と、先に目を覚ましたそこにいるもう1人のお仲間が死ぬ時だ。ここに来たのが間違いだったな」
カストロが顎で示した先にいたのはダニエル。
デイビットと同じように、縄で椅子に捕らわれているが、特に外傷が見られないところからすると、気が付いたてからさほど時間が経ってないようだ。
こういう事態に陥れば、拷問を受けるのが普通だ。
しかし、その形跡がないということは、そもそも拷問する気がないのか、拷問されるほど時間が経過してないということ。
デイビットと目が合ったダニエルは、これといった反応を見せずに、カストロに視線を移す。
捕まる直前のデイビットの行動を根に持っているのか、下手に反応して、カストロに余計な不信感を抱かせないためかは定かではない。
「まぁこっちからすれば好都合。あんたの方から姿を見せてくれるとはな。実は、あんたに聞きたいことがあっ……」
「俺達の祖国を第1目標とした例の計画とは一体何なんだ? ……だろう?」
まるでデイビットの言動を予知するかのように、カストロは薄く笑みを浮かべて言葉を遮る。
デイビットは、あまりの衝撃に、自分の胸中を予想したカストロを、ただ見つめることしか出来なかった。