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複雑・ファジー小説
- Re: アセンション ( No.41 )
- 日時: 2012/11/06 23:52
- 名前: デミグラス (ID: RadbGpGW)
「何だ…………そうか、分かった」
手短に通信を終え、胸ポケットに無線機を戻したカストロは、どことなく覚束無い表情で、目前のアメリカ兵たちを見る。
「残念だ……本当に残念だ。これでは全員揃わない」
その言葉に2人は安堵した。
ライアンとカールが敵を撒いたと確信したのだ。
しかし、その刹那の希望は、あまりにも呆気なく崩れ去り、同時に2人を絶望に叩き落とす。
「まさか、1人死んでしまうとはな。殺す気はなかったが、向こうが抵抗してしまったようだ。」
少しの間、2人はカストロが何を言っているのか理解出来なかった。
というより、彼等の頭が理解することを拒んだという方が正しいか。
ダニエルもデイビットも、精気が抜けたようにぐったりと顔をうつ向けたまま、ただ地面を見つめている。
感情を表に出さないクールなダニエル、強気な性格で人前では弱みを見せないデイビット。
似て非なる彼らだが、どちらの性格の持ち主も、人前で涙を流すことは少なく、自分の心の奥底で押し潰そうとしてしまう傾向が強い。
言い換えれば、そこから立ち直ることが難しいのだ。
更に、この2人が共通しているのは、アイツに行き残っていてほしいなどという感情を決して抱いてないところだ。
デイビットにとって、ライアンもカールも同じ海兵隊の仲間……いや、家族も同然の存在。
古くからの仲や、新任など関係ない。
どちらもかけがえのない存在だ。
ダニエルは一見すればカールとの接点が少ないが、仲間の命を重んじる彼には、やはりそんなことは関係ない。
彼らの頭の中には、ただ今の連絡か間違いあってほしいという願いしかなかった。
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