複雑・ファジー小説
- Re: Special Key ring 『オリキャラ募集中!』 ( No.20 )
- 日時: 2012/10/09 14:22
- 名前: 氷空 ◆UQtQExcjWY (ID: l/xDenkt)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「……何の用ですか?」
睨みつけるようにして、低い声で放つ。何もないなら、それで終わりだ。
そして返ってくるなら——
「何の用、とは嬉しいねえ。自分からボコられに来てくれるんだから」
男たちが嘲るように笑う。昨日、怯えて逃げ帰ったのは果たして誰だったか。馬と鹿の何たらを見ているようで、うんざりしてくる。
また叩きのめしてあげてもいい訳だけど。ただ、気がかりが1つ。
そっと咲苗ちゃんの顔を覗き見ると、その表情は固かった。何を意味するか、何となく想像はつく。
「その口調ですと、私に用があるようですね。でしたら、先に彼女は帰らさせてもらえません?」
「んー……そいつは聞けないねえ。あった子全員に用事があるわけだし」
馬と鹿の何たらがけたけたと笑うさまは、どうにも癪に障る。一番嫌いな人種とは、恐らくこういう連中なのだろう。
それにしても、咲苗ちゃんは巻き込みたくはないし。……取るべきは1つか。
「咲苗ちゃん」
男たちに聞こえないよう、小さな声で囁く。顔は当然、連中を向いたままだが。
「陽菜ちゃん、挑発しないほうがいいよ。あいつら、ディフェクターっていって……」
「この道戻って家に帰れる? 帰れるなら合図するから、そのタイミングで走って」
どうやらこの連中、ディフェクターという名前を持つらしい。……これで全部だといいんだけど。
取りあえず、まずは咲苗ちゃんをここから離れさせる。それさえできれば、後は容易だろう。
「……え?」
「あいつらがまだ仕掛けて来ないうちに。……3……2……1——」
一瞬、空気が張り詰めた。強制的にカウントダウンが始まれば、当たり前かもしれないけど。
「——今だよ!」
そう叫ぶと同時に、咲苗ちゃんが走り出した。一方的に始められたと言えど、本当は最初からこうしたかったのかもしれない。走り去る背中を見て、ふと、そう感じる。
そして、その背中を守るかのように、炎の壁が立ち上がった。突然過ぎるそれらに、ディフェクターは唖然としている。
(さて、咲苗ちゃんの安全確保の為と言えど、これを使わせたこいつらはどうしようかな……)
「——え」
椅子が音を立てて後ろに倒れた。だが、そんなことなど気にも留めず、部屋の外へと目を見やる。
今の……もしかして——
刹那、奇妙で、そして懐かしいような、そんな感覚が襲った。他者には絶対に分かり得ない、不思議な感覚。
直感が行くべきだと告げる。脳も、行かなければいけない、そう言っているようだ。ドアへ走り、ノブへ手をかける。
「どこへ行くのですか? 秋野生徒会長」
後ろからかかる声に、一瞬動きが止まる。だが、今はそれどころではない。
「ちょっと出てくる。後は頼んだぞ、杉野」
「え——ちょっと、どこへ行くか答えてくださいよ!? 生徒会長!!」
ドアの向こうから聞こえる声に心の中で「ごめん」と謝りながら、学校の外へと走っていった。