複雑・ファジー小説
- Re: Special Key ring 『オリキャラ募集中!』 ( No.23 )
- 日時: 2012/10/14 21:34
- 名前: 氷空 ◆UQtQExcjWY (ID: l/xDenkt)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
息を切らして外へと駆け出す。辺りに生徒はほとんどいない。それでも、わずかに残った生徒からは好奇の目線を浴びる。
そんなこと、気に留める暇は無い。さっきの感覚は、わずかの間にもどんどん消えていってしまう。
「——っつ、虎空!」
腰のチャーム、大剣とは別に揺れているものに手を伸ばす。直後、手元から滑り出てくるのは、白銀の毛を持つ猫。
《やれやれ、呼ばれるとは思ったけど。えっと……こっち!》
頭の中に声が響く。いわゆるテレパシーだというやつだ。虎空と俺とだけが使える、不思議なコミュニケーション術。
虎空が走るその後を追いかける。あの感覚は虎空のほうが追いかけられる。そもそも、あれは虎空が初めて会った際に放った感覚なのだから。
少し走ると1人の人影が見えてきた。先から走ってくる、見覚えのあるツインテールに思わず口が開く。
「宮下!?」
「隼人くん! 陽菜ちゃ……江夏さんが!」
その言葉だけで何を言いたいか分かった。例の如く、ディフェクターだろう。さぞかし、昨日の復讐といったところか。
あの実力なら助け手など必要なさそうだが——宮下を安心させるためにも「分かった」と一言叫ぶ。
《その江夏とやらが、もしかしてそうなんじゃない?》
《フフッ》と、虎空はこちらを振り返ることなく、小さく微笑んだ。
虎空が足を止めた時、場は凄まじいことになっていた。
道路の両側には、ズラッと人が並んで倒れている。全員見覚えのある顔、ディフェクターだ。
立っている人間は2人だけ。それも、1人は胸元を掴まれるようにしてなんとか立っている体だ。
「これに懲りたら、次から止めてくれますか?」
低く、ゆっくりとした声。それは威圧的で、そして無機質。非情で、冷酷な声。
もはや抵抗するだけの力もないのか、掴まれたその上が小刻みに振れる。体力の限界だったのだろう、解放されると男はへなへなと崩れ落ちた。
「——えな……つ、……さん?」
情けないことに、声が震えている。彼女のその迫力に、呑まれてしまっている。
ゆっくりと振り向いた彼女が一瞬見せた、無表情。恐ろしいそれは、俺を認識してすぐ、彼方へと消えた。学校で見せた顔が俺へと向けられる。
「秋野くん……でしたっけ? どうしました?」
「え……どうしたって……」
続きが出てこない。正確には、出てきようがない。
これを見て、何が語れる。凄い実力ですね? ちょっと気になることがあって? 場の空気は、そんな発言を許してくれるわけがない。
《君が江夏さんって子?》
(虎空!? 一体何を!? テレパシーは俺としか使えないんじゃ……)
だが、直後江夏さんは虎空へと微笑んだ。つられてか、虎空もフフッと笑う。
「……ここじゃあ話すのも何ですし、移動しません?」
「……え?」
展開が急過ぎる。彼女からの思わぬ提案に、俺は言葉を失った。