複雑・ファジー小説
- Re: Special Key ring 『オリキャラ募集中!』 ( No.25 )
- 日時: 2012/10/09 13:55
- 名前: 氷空 ◆UQtQExcjWY (ID: l/xDenkt)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
歩くこと数分、彼女が案内した先は小さな店だった。ウィンドウから見えるのはたくさんのチャーム。
普通に考えれば、ここはチャームショップだろう。だが、こんな住宅街の真ん中に、いつできたのだろうか。
江夏さんはその中に、何のためらいもなく入っていく。慌てて俺も後に続く。
「ちょっと待っててくれます?」
そう言い残し、彼女は店の奥へと向かった。レジの横を通り、裏へと続くドアを開ける。
閉まる直前に聞こえてきたのは「ただいま」の声。店内に静寂が訪れる。
(……ここ、もしかして江夏さんの家?)
その予想は程なくして正解だと知る。レジで本を読んでいた男性——彼女の父親が、俺に声をかけてきたから。
「君、もしかして陽菜のクラスメイトになった子かい?」
「え……あ、はい。……彼女のお父さんですか?」
「そうっ。その様子だと、何も言わずに連れてこられたみたいだね」
「あ、いや……その……」
「あの子はそういうところがあるからねえ……ははっ。……ところで、何か気になるチャーム、あるかい?」
「あっ、まだほとんど見ていないので、今から見させてもらいます」
会釈をして、店内をうろついてみる。12畳程度の小さな売り場に、属性や種類に分類されている。
1ヶ所をざっと眺めてみても、実に様々なチャームが置いてあり、時計にじょうろに弓矢に犬……数え上げればきりがない。
不意に1つのコーナーに目が留まった。レジのすぐ横の小さなコーナー。ここだけ、属性も種類も分類されずにチャームが並んでいる。
1つ手に取ってみれば、きめ細かい細工が目に入る。銀色の中に彫られたそれは、光が反射して白く光る。
「お、それはね、レベルⅣのチャームなんだよ」
レベルⅣ。一般的なチャームの、最高ランク。
チャームはⅠからⅤのレベルが存在する。誰でもⅠは使うことができ、Ⅳまでは上がるごとにその人の経験や素質が問われる。
一般的にはⅣまで。Ⅴはレベルとしては特別であり、『特定の人物が特定のチャームを使える』とされている。
「召喚してみてもいいですか?」
「え? ああ、周りに気をつけてくれればね」
瞬間、彼の思考が分かった。小学生がⅣを召喚できるわけがないという思いと、どこまで召喚できるか試したいのだろうという考え。
残念ながら共に外れているし、そもそも試す気も試す必要もない。
剣のチャームを手に取ってみる。留め金の近くには白い石、恐らくは風属性のチャームだろう。
チャームを握り、意識を集中させる。少しチャームが熱くなったかと思うと、それは細身の剣に形を変えた。
チャームに存在する属性は5つ。『無』、『水』、『炎』、『雷』、そして『風』。
本人に適合した属性なら高レベルのものも召喚できるが、そうでなければよくて1つ低いレベルのものまで。
俺の適合属性はというと、当然風。だから今、召喚できたわけだ。
「え……君……」
「お待たせしてごめんなさい!」
父親の呆気にとられる声を遮り、江夏さんが出てくる。手には、小さな白い箱。なぜかエプロンと軍手を付けている。
彼女は俺の手に握られているものに気づいただろうか。元の形に還元し、売り場に戻す。
「庭使っていいらしいから、移動しましょう?」
彼女に促され、店を出る。回り込むようにして、家側のアプローチ奥の庭に向かった。