複雑・ファジー小説
- Re: Special Key ring 『オリキャラ募集中!』 ( No.26 )
- 日時: 2012/10/14 21:35
- 名前: 氷空 ◆UQtQExcjWY (ID: l/xDenkt)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
暦上ではもう秋と言えど、まだまだ暑い日が多い。だが、ここはそんなことなど、微塵も感じさせない。
地面を覆う芝生は水が撒かれたばかりらしく、ひんやりと湿っている。そこに風が通り、冷風となって俺に吹き付ける。
ウッドデッキは木製のガーデンテーブルセットが置かれ、上にはビニル製の屋根。まるでどこかのカフェみたいだ。
ちなみに今、俺は1人。江夏さんはテーブルの上に箱を置くと、再び家の中に入っていった。
「暑いから何か飲み物持ってくる」そうだが、別になくても平気な涼しさだ。
と、ウッドデッキ奥の窓の開く音。氷が入ったグラスとボトルの乗ったお盆を手に、江夏さんが出てくる。
「はい、紅茶でいい?」
言いながら、彼女はグラスに紅茶を注ぐ。紅茶は嫌いじゃないし、断る理由もない。その問いに答えるように頷く。
グラスを受け取ると、中の氷がカランッ——小さく音を立てた。口を付けると、冷たい紅茶が喉を潤してくれる。
「さっきの子、もうチャームに戻っちゃったんですか?」
「え? ……ああ、虎空のこと?」
どうやら彼女、虎空が気になるらしい。手を伸ばし、虎空を召喚する。
虎空はあくびをしながら体を伸ばすと、じっと江夏さんのほうを見つめた。その様子に、彼女の手が伸びる。
虎空を撫でる彼女と、じゃれつく虎空。見ていて、なんだか微笑ましい光景だ。
「ふふふっ。こうやっていると、まるでただの猫ですね」
その言葉に、俺の顔が固まった、気がする。彼女の目はしっかりと虎空に向けられ、虎空もまた彼女を見つめている。
テレパシーで話しかけられた時点でただの猫とは思っていなかっただろうけど。それでも、場に緊張が走る。
《ふぅん。やっぱり気づいてたんだ》
「ええ。改めてご挨拶申し上げます——白虎」
白虎。中国の神話に登場する、四方を司る神獣の1つであり、西方を司る存在。
それを今、江夏さんは口にした。それも、虎空に対して。
「——いつ分かったの? ……虎空が、白虎だってこと」
声が震える。多分、顔も少なからず引きつっているだろう。
今まで誰も気づきはしなかった真実。それにさらっと気づかれて、驚くなというのは無理がある。
「いつって、見た時かな? 『ああ、白虎だ』って、すぐに気づきました」
見た時。つまり、白虎が話しかける前。
その言葉に、漠然とした思考が1つの結論としてまとまった。切り出すなら、それは今だろう。
「じゃあ、もしかして俺が話したいことも分かってる?」
「——はい。この子のことですよね」
そう言って江夏さんは右手を持ち上げる——正確には、右手首のブレスレットを晒し出す。
そこにぶらさがっているチャームは2つ。そのうちの1つを、彼女はゆっくりと握りしめた。