複雑・ファジー小説

Re: Special Key ring 『オリキャラ募集中!』 ( No.28 )
日時: 2012/10/14 21:37
名前: 氷空 ◆UQtQExcjWY (ID: l/xDenkt)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

 紅蓮の炎が庭に舞い散った。いや、炎ではない。芝生が燃えない以上、炎ではないのだが、それはどう見ても炎。
 はらはらと舞うそれをしばらく眺めてみれば、深紅の羽だと気づく。燃えているように光を反射し、空を飛んでいる。

《なるほど、主が白虎の者か》
「……姿見せて挨拶なさい。朱雀」
《何故にそれが必要よ? この程度を見極められず、四神を召喚できると誰が認めよう?》

(……そこのお二人、俺にも聞こえると分かっての会話でしょうか?)

 突っ込みどころ満載。だけど、あえて口にしない。
 口にしたら、呆れられる気しかしないから。少なくとも、朱雀には確実に認めてもらえないだろう。

 現状、分かったのは朱雀の存在。そして、朱雀の姿を視認しなければいけないということ。
 会話からして、江夏さんには見えているのだろう。だが、辺りには舞い散る羽以外、何も見えない。
 彼女に聞いたところで何か教えてはもらえないだろう。なら、虎空ならどうだ?

「虎空、見え……」
《悪いけど、その質問には答えられない》

 尋ねる前に一蹴された。同じ四神として、安易に教えることはできないのだろう。
 こうなると、己の力だけで朱雀を探し出さなければならない。だが、どうやって探せばいい?
 手がかりは何もないというのに。



 空からは真紅の羽が舞い落ちてくる。しかし、いくら目を凝らせどそこに何の姿も確認できない。

《白虎を召喚できる者とは、所詮その程度なのか?》

 うんざりして来たのだろう、朱雀の声が響く。
 俺だってうんざりしている。それでも、探せということだから探している。そんなことを言うのなら、姿を見せてくれればいのに。
 それとも、簡単に姿を見せられない理由でもあるというのか? ……四神を召喚できると認められないからか。

《これでも加減はしておるのだぞ? 白虎の者に、我の本気を破るのは難しい故にな》

(え……破る? どういうことだ? これは朱雀を探すんじゃ……)

 1つ、思い当たった。朱雀が見つからない、単純で簡単な理由がある。もっとも、それをするには相当な実力がいるが。
 足下を覗けば、羽は薄く広がるものの、芝生を覆い尽くしてはいない。もう、充分な時間舞い散っているのに。

「……虎空、風を巻き起こせるか?」
《ん、分かった》

 待っていたのか、意気揚々と虎空は庭に風を起こす。地に落ちていた羽は舞い上がり、辺りは赤く包まれる。
 その中を、目を凝らしてあるものを探す。すると、見つかった。江夏さんのすぐ右側に、1点の揺らぎ。
 迷わず、そこに歩み寄る。じっと見つめれば、同じく見つめ返されている気がする。……間違いない。

「そこに隠れて——いえ、そこにいましたか。朱雀」

 僅かの沈黙、舞っていた羽が一斉に燃え上がった。今度は光を反射しているのでなく、実際に。
 全てが燃え尽きると、それは跡形もなく消えた。代わりに残ったのは、淡い朱色の羽を持つ1匹の鳥。

《なるほど、それなりには備わっているらしいな。白虎の者よ》

 そう言い飛び立つ姿。それは太陽を反射し、体全体が燃え上がっているように見える。
 それは中国の神話に言い伝えられる、南方を司る神獣、朱雀そのままだった。