複雑・ファジー小説

Re: Special Key ring 『オリキャラ募集中!』 ( No.29 )
日時: 2012/10/14 21:38
名前: 氷空 ◆UQtQExcjWY (ID: l/xDenkt)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

「予想通り、朱雀の見通しより早く事が済みましたね」

 その言葉に真っ先に反応したのは朱雀だった。風を起こさんとばかりに羽ばたき、江夏さんの眼前へと動く。
 対して江夏さんはいつの間に広げていたのだろう、テーブル上の道具を何もなかったかのごとく、箱へ片づけていく。

《陽菜よ、我が加減したのも分からぬというか》
「加減も何も、どこか甘いところがあるのがあなたでしょう?」
《我と白虎の相性を考え、加減をして何が悪いという?》
「ですから、それが結果甘いということです。そもそも加減するのなら、それも含めて見通しを立てるべきでしょう?」
《朱雀、陽菜ちゃんだっけ? 彼女の言う通りだと思うけどなー》
《ええい、若輩者は黙っておれ! お前が入るとろくなことがない!》
《ちょっと! 何さ、その言いぐさ。朱雀が僕の話聞かないのがそもそもでしょ!?》
《お前の話を聞いたところで、今まで何か良案があったか? ろくなことがないのは事実であろう!》

(……俺、また置いてけぼりですか? というか、話逸れてるし。そもそも四神に年齢とかあるわけ?)

 一旦置いてけぼりにされると、突っ込みどころ満載。これも朱雀と関わったが故なんだろうか。
 元の発言——江夏さんの「予想通り〜」の発言の意味が知りたいが、これじゃあそうもいかない気がする。

《なんだと!? 我の何がおかしいというか!》
《朱雀はさ、いっつもそうだよ! いつだって強情で、人の意見を一切聞かないでさ。この頑固者の老いぼれ!》
《青二才が何を言う! そんなたわ言、我を唸らせる案を持ってきてからにしろ!》
《だったらまず朱雀が僕の納得する案を出してみてよ! それもせずによく言えるね!》

 完全に脱線したこの喧嘩、いつまで続くのだろうか。むしろ、終わりはあるのだろうか。
 江夏さんを見れば、同じく頭を抱えていた。まあ、そうなるだろうな、普通。
 何が原因でこの2匹——で大丈夫だよな。仲が悪いのかは知らないけど、話題はそれじゃないっていうのに。

「……秋野くん」
「了解です」

 目で確認し合い、2匹を同時にチャームに戻す。理由は簡単、次に召喚した時、これで喧嘩しないようにするため。
 喧騒がなくなれば、辺りには静寂——四神の声が聞こえなければ、元々そうなのだが、それが訪れた。
 風に揺れる、木々のこすれ合いが耳に届く。騒がしさが消え、なんだかこの音が癒しに聴こえる。

 「ふうぅっ……」と、大きなため息が2人同時に漏れた。その様子に、つい互いの顔を見合わせる。
 やがてそれもおかしく思え、思わず目を逸らして笑ってしまった。それも、ほぼ同時に。

「——くすっ、なんですか、その大きなため息」
「江夏さんだって。いっしょにため息ついていっしょに笑ったんだから同じでしょ」

 今度は笑い声、それも人のものが絶えなくなってしまった。それはどうしても止まらず、いたずらに時間だけが過ぎる。
 それは江夏さんが母親に呼ばれるまで続き、結局四神以外の事を話すことはなかった。