複雑・ファジー小説

Re: Special Key ring 『オリキャラ募集中!』 ( No.30 )
日時: 2012/10/09 14:17
名前: 氷空 ◆UQtQExcjWY (ID: l/xDenkt)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

『な……何だよ、あの怪物……』
『——あれこそが倒すべき相手……違う?』
『……だな。あれが全ての元凶、この世界を灰に変えた悪魔』
『みんな、覚悟はできてる? 何物にも代えて、あれを倒す覚悟は——?』
『ええ……と言いたいところだけど、あなたはあるのかしら?』
『できてるに決まってるだろ。あれを倒すために、ここまで来たんだ』
『……じゃあ行くぞ。あれを……あの悪魔をたお——!!』



 勢いよく体が跳ね上がり、ベッドが音を立てて軋む。目は大きく見開かれ、口からは荒い息が漏れる。

「——また……あの……夢……」

 荒い息を整えようと、大きく吸って、吐いてを繰り返す。だが、呼吸はなかなか治まることを知らない。
 少し経って、ようやく呼吸が落ち着いてくると、夢の風景が眼前に蘇ってくる。それはまさに、戦慄の一瞬。

 広がる荒れ果てた大地の上を滑空する、紫がかった黒龍。その黒龍を倒すべく意気込んで——
 瞬間、目の前が赤黒くなる。それが黒龍の吐いた炎だと理解できるのは、いつも髪が燃えるのを感じてから。
 全身を焼かれる灼熱に悶え、そこで意識が戻り、夢だと認識するのだ。

「最近見なかったのに……な……」

 月明かりを頼りに、1階へと下りる。誰もいないキッチン、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り、乾いた喉を潤す。
 窓の外へ目をやれば、月明かりに照らされる庭の上に、満天の星空が輝いていた。



 ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ——
 規則正しく鳴り響く時計に、ベッドから手が伸びる。器用にスイッチを動かしてアラームを止めると、その手は目を隠すように顔の上に置かれた。

「……もう朝、か……」

 閉ざされたカーテンの隙間から朝日が漏れこんでくる。開きっぱなしのドアの先は、天窓から降り注ぐ光で溢れている。
 だが、その様子にベッドの上で何かが動く気配はない。顔に当てられた手は、まるでその目に光が入るのを拒んでいるようで——

(……あれから結局、寝れなかったのかな。……学校行くの、つら……)

 頭は必死に疲れを訴える。自分の部屋に戻ってから、寝ることができたか。答えは、否。
 目を閉じれば、夢で見た景色が再び広がる。そうすれば、脳は主の思いに反して夢について思考を巡らす。
 思い返しては考え、また思い返して——それの繰り返しで、結局寝ることは叶わなかった。

 疲れている体に鞭を打ち、体を起こす。多少ふらつく足つきで階下に降りると、そこには誰もいなかった。
 その代わり、テーブルの上にはパン、サラダといった洋風の朝食。脇にはスープ皿と、コンロの上にポタージュの入った鍋もある。
 朝早くから夜遅くまで、まるで子供など忘れてるんじゃないかという親の、たまに置いていってくれる朝食。
 わずかな時間で作ってくれたのだろうそれに、感謝を込めて口に運んだ。